藤沢に家裁出張所を 神奈川県弁護士会、新設求め

 神奈川県弁護士会が、藤沢簡裁(藤沢市朝日町)に家裁出張所の新設を求める運動に力を入れている。背景には、家庭内の紛争など家事事件の受理件数の増加がある。同簡裁管轄地域の人口は116万人余と小規模な県よりも多く、運動を進める弁護士は「家裁の態勢強化は欠かせない。司法サービスの公平性を考慮すれば藤沢に出張所を設けるべきだ」と声を上げる。

 家裁は夫婦・親子関係の紛争や成年後見業務、相続などの家事事件と、少年事件の審判が主な業務。出張所は最高裁の規則で設置が可能で、同弁護士会はこのうち家事事件に関する業務を出張所で担ってもらうことを想定している。

 県内の家裁は横浜市中区の本庁をはじめ、川崎、横須賀、相模原、小田原の4支部体制で運営。藤沢簡裁管内(藤沢、茅ケ崎、大和、海老名、綾瀬、寒川の5市1町)の住民が家裁を利用する際は、本庁に赴く必要がある。

 同弁護士会によると、家裁本庁の家事事件の件数は2003年に約2万2千件だったが、16年は約3万7千件に増加。個人の権利意識の高まりや高齢社会の進展、ライフスタイルの変化などが要因とみられる。

 「件数の増加で本庁は待合室に人があふれている状態」と語るのは同弁護士会の間部俊明弁護士。千葉県の市川簡裁(管内人口約128万人)に家裁出張所が置かれている事例を引き合いに、「人口や利便性を考えれば藤沢に出張所があっていい」と訴える。

 そもそも藤沢に出張所の新設を求める声は以前からあり、同弁護士会は10年と13年、新設を働き掛ける方針を掲げた。藤沢、茅ケ崎の両市議会も16年6月までに政府と最高裁宛てに意見書を送付しているが、政府側は国会答弁で否定的な見解を崩していない。

 そこで同弁護士会が着目したのが、16年に施行された成年後見制度利用促進法だった。同法では成年後見業務の機能強化に向け、家裁の人員体制の整備に努める方針が条文に盛り込まれている。

 同弁護士会は今年3月、同法の趣旨を踏まえて藤沢と厚木の両簡裁に家裁出張所の新設を求める会長声明を表明。4月下旬にはご当地の藤沢市内で、関東弁護士連合会の定期交流会を開催した。この条文をてこに状況の改善を強く迫っていく運動方針が報告され、鈴木恒夫市長も駆け付けてエールを送った。

 間部弁護士は「成年後見制度の利用が今後本格化していくにつれ、本庁での対応はますます難しくなる。藤沢に出張所を設けて、事件の分散を図るべきでは」と提起している。

家裁出張所の必要性を訴えるため、神奈川県弁護士会が作成したパンフレット

© 株式会社神奈川新聞社