大正期のピアノ再生を 横浜国大、修復目指し資金公募

 横浜国立大学(横浜市保土ケ谷区)が、大正時代に購入したグランドピアノを修復しようと、インターネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)を実施している。ドイツ・ベヒシュタイン社製のピアノは第二次大戦後、進駐軍が接収。連合国軍総司令部(GHQ)に返還を求め、再び大学に戻るという数奇な運命をたどった。同大学は本来の音色を取り戻し、名器を次世代に継承したいと協力を呼び掛けている。

 ピアノは1923~24(大正12~13)年ごろに製造された同社のE型というモデル。同大学の前身・横浜工業高校の鈴木達治校長が関東大震災翌年の24年、学生の課外活動用に購入した。大正末期から昭和初期にかけて国内に数台しか存在せず、ヨーロッパの著名なピアニストが演奏会を開くこともあった。

 戦災こそ免れたものの、終戦直後、ピアノは進駐軍に接収された。学生らが必死に探し回ったところ、東京の将校クラブに保管されていることが判明。大学を通じ、GHQと粘り強く交渉した末、47年に返還されたという。

 ピアノはその後、火災に遭い、学生たちによって救出されたり、足が折れてしまったり。さまざまな苦難を乗り越えながら、受け継がれてきた。98年に大がかりな修理を施したが、長い年月を経て、本来の音色を奏でることができなくなった。すべての部品を解体し、主要部品の交換などを行う必要があるという。

 「大学が地域の文化・スポーツの拠点でありたい」と話す長谷部勇一学長。修復が実現したら、学内のみならず地域の人たちも、その音色に触れられる機会をつくりたいと考えている。

 大学として初のCFに挑戦する狙いも、約1世紀伝わる名器の存在を多くの人に知ってもらうためだ。5月18日を期限とし、目標額は130万円。寄付は3千円から受け付けている。額によってピアノを自由に演奏する権利や、専門教員によるピアノレッスンなどのお礼をするという。達しなかった場合は不成立となり、返金される。

 詳細は専用サイト(https://readyfor.jp/projects/ynu-cf001)。電話での寄付の申し出も受け付けている。問い合わせは、同大学総務企画部学長室電話045(339)3038。

グランドピアノのCFへの協力を呼び掛ける長谷部学長=横浜市保土ケ谷区の横浜国立大学

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