日鉄住金建材など土木製品各社、採算悪化で相次ぎ値上げ 需要低迷、コスト上昇で

 ガードレールなど土木製品の販売価格引き上げが急務となっている。需要減少が続く中で素材や副資材、輸送費などが大幅に上昇。自助努力で吸収し切れないレベルとなっているが「コスト上昇分に販価が追い付いていない状況」(メーカー筋)で、採算は著しく悪化している。安全・安心な生活に土木製品は必須で、メーカー各社は5~10%程度の値上げの実施により収益を立て直し、事業の継続を図っていく方針。

 ガードレールやコルゲートパイプ、ライナープレートなどの土木製品は素材の熱延鋼板や鋼管、ボルトなどに加え、めっき用亜鉛地金などの副資材も価格が高騰。輸送費についても大幅な運賃改定にさらされるなどコストプッシュ要因が多い。大手メーカーの日鉄住金建材は、2017年度の土木商品事業は増収減益で販売数量こそ微増となったものの「製品値上げがコストアップに追い付いていない」と採算悪化に苦しんでいる。

 同社ではこの4月契約分から改めて土木製品の5~10%の値上げを実施。需要の低迷が目立ち、注文の小ロット化により生産・輸送効率が悪化しているガードレールやガードケーブルなどは8%の建値改定を行い、収益レベルの回復に注力している。今年度の販売数量は前年比横ばいから微減とみているが、新日鉄住金エンジニアリングから移管された中小径の回転圧入鋼管杭「NSエコパイル」事業の分がプラスに効いてくるという。

 JFE建材は17年度、量を追わず価格重視の販売に注力。値上げについては16年7~9月期から実施し「累計2万5千円の値上げを目指してきたが浸透は2万円近傍にとどまっている」と、現在も継続して取り組んでいる。加えて亜鉛価格の上昇により「めっき材はさらに1万円ほどコストが上がっている。さらなる値上げに踏み切りたいが、先の値上げが完遂できておらず厳しい状況」という。

 17年度は、土木製品事業全体は減収で、ライナー・コルゲートなどは販売数量減で減収減益。18年度は補正予算などもあり昨年度並みの需要を見込む。

 道路・土木製品をメインに製造・販売する神鋼建材工業は、16年度下期から7~10%の値上げを進めてきたが「値上げできたのはざっくりと言って半分ぐらい」(工藤寛社長)。昨秋、親会社の神戸製鋼所の不適切行為が明らかになったため「取引関係先への品質問題の説明もあり、値上げのお願いが不十分になってしまった」とする。

 ただ、値上げ交渉を始めた16年度下期と比べ素材だけでなく副資材価格や運送費などのコストも上昇。これを販価に転嫁するため、この4月見積もり分から現行価格比8~10%の値上げを進めている。「値上げの成否が今年度の業績を左右する。お客様の理解を得ながら、できるだけ早く進めていきたい」と積極的に値上げに動いている。

 土木商品需要をめぐっては、九州北部豪雨災害に起因する流木捕捉工需要、暫定2車線区間の安全対策用ワイヤロープ式防護柵の設置本格化、東京五輪関連工事や都市圏ミッシングリンク解消工事に伴う防護柵および土木商品需要など好材料もある。いずれも日本の国土強靭化やインフラ拡充に欠かせない案件で、各社は販価を大事に守りながら製品を提供し、安全・安心に貢献していく構え。

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