金属行人(5月7日付)

 新年特集で「建材分野は安定生産の確保がカギ」との記事を書いたが、まさにそのような状況になっている。建材に限らずさまざまな分野で人手不足が深刻化していることもあり、このまま人手不足が続けばいろいろな製品の価格が急激に上昇していくのではないかと危惧している▼人手を補うのがAIやロボットなどのテクノロジーだ。日本は人口減少によりロボット化や自動化ニーズが他国より強いのではないかと思われる。従って、その技術の進歩も急激に進むのではないだろうか▼一方でこのまま人口が減少しては国としての存続も危うくなってくるかもしれない。汗をかかずにもうけることが至高といった価値観がまん延する中で、公費を投じて子育てしやすい環境を形成していくことは遅れていきそうなムードもある。自動化などは労働力不足の解決にはなるが人口減少の解決にはならない▼暮らしを楽にするという意味で豊かさを追求する技術は日進月歩で進化していきそうだが、心を豊かにする技術は生み出すことができない。人口が減少しているにもかかわらず、ヒトの価値が日本では損なわれてきている感じも受ける。混沌とした世の中で自分のよりどころとするぶれない価値観をしっかりと持っているだろうか。

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