2年生で甲子園2打席連発もケガに泣いた春 「自分の成長がチームの成長に」

昨夏の甲子園で2打席連続ホームランを放った神戸国際大付(兵庫)の谷口嘉紀【写真:沢井史】

昨夏の初戦・北海戦では2年生で2打席連続アーチを放ち注目を浴びた

 昨夏の甲子園。初戦(2回戦)の北海戦で、2打席連続ホームランを放ったのが、当時2年生だった神戸国際大付(兵庫)の谷口嘉紀だった。右へ左へ痛烈な当たりを見せたあの場面は今も鮮明に記憶に残っている。あれから約9か月。新チームでは4番を務めてきた谷口は、グラウンドではなく、グラウンド隣のスペースで自主トレーニングをしていた。そして右手はギプスで固定されていた。

 春の地区大会が迫った3月中旬。練習中に内野手と接触し、右手を強打。診断の結果は右手舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折。全治3か月だった。しかも手術が必要だったため、今季初の公式戦を待たずに戦列から離れることに。だが、当の本人は冷静だった。

「自分はもともとケガが多い方で、高校に入ってから初めてのケガではなかったんです。手首を使えないのでちゃんと練習できないのは辛かったですけれど、手首を使わないトレーニングならやってもいいと言われていたので、こうなったらやれる範囲で練習はちゃんとやろうと。反対にケガをしたから出来ることもあると思いました」

 腹筋をはじめ、下半身を鍛えるトレーニングなども意欲的にこなしてきた。実は秋の大会を終えて肩を痛めていたのもあり、冬場は別メニューだったという。地区大会はすでにメンバー登録されていたのでメンバーの中に名前はあったが、県大会ではもちろんベンチからは外れた。1年秋の県大会以来、スタンドで試合を見つめることになったが、「外から試合を見て、学ぶことも多かった」と振り返った。

 谷口の名前が関西圏で知れ渡ったのは一昨年の近畿大会。背番号17でベンチ入りを果たした谷口は、準決勝の大阪桐蔭戦で2-3の1点差で迎えた9回に代打で登場し、同点アーチを放った。決勝の履正社戦でも途中出場して二塁打を放ち、1年生離れした力強いスイングは当時から際立っていた。

青木監督「6月には復帰できる見込みなので夏には間に合います」

 そんな谷口がずっと背中を追い続けていたのが前チームで不動の4番を務めた猪田和希(現JFE東日本)だ。「猪田さんのひとつひとつの動きから見て自分のバッティングに生かしていました。強い打球が打てるのも憧れです」。夏の甲子園では精彩を欠いたが、夏の県大会では7試合で4本のホームランを放った同じ右打者の大先輩の姿を何度もなぞってきた。

 だが、自身の昨夏の甲子園での2アーチの話を振ると「たまたまです」と謙そんする。「打てたことは自信にはなりましたけれど、技術的にはまだまだ。秋に県大会で負けてからバッティングを基礎から作り直そうとしたらケガをして、今も思うように(バッティングを)固められていないんです。でも、(ケガをした)今の自分をマイナスにはとらえていません」ときっぱりと口にする。

 「6月には復帰できる見込みなので夏には間に合います」と青木尚龍監督。高校通算本塁打は38本を数える関西を代表するスラッガーだが「これからもっと成長していきたいです。自分の成長がチームの成長にも繋がる。今、やれることをやっていけば夏に生きることもたくさんあります」。勝負は最後の夏。そう自分に言い聞かせながら、今日も地道に黙々とトレーニングを積み重ねている。

(Full-Count編集部)

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