お年寄りへバス使って 神奈中西、6月から秦野で増便

 高齢者に自家用車の代わりに路線バスを使ってもらおうと、神奈川中央交通西(神奈川県平塚市)は6月から秦野市曽屋の山谷地区と小田急線秦野駅を結ぶ路線を増便する。住民の高齢化を受け、地元自治会が市を通じて要望していた。自治会などは4月26日、地域の高齢者向けに実際のバスを使った「乗り方講座」を開き、バス利用を呼び掛けた。

 同地区は伊勢原市境沿いにあり、約30年ほど前に分譲された住宅地。分譲当時は秦野駅と鶴巻温泉駅に向かうバス路線があったが、住民の多くは自家用車を既に所有し、鶴巻温泉駅とを結ぶ便は廃止。秦野駅への路線も赤字で減便された。一方で住民の約3割が65歳以上の高齢者となっており、運転をやめる人も相次いでいる。

 現在、秦野駅行きは朝夕に1時間1、2本あるものの、平日の午前10時から午後2時台は1本もなかった。高齢者の場合、午前中に病院に行くことが多いものの、病院から帰宅する時間帯にバスがなく、地区外のバス停から20~30分かけて歩かざるを得ないという。ある主婦(68)は「買い物は荷物を持たないといけないので(昼間に便のある)土日にしている。平日は本当に不便」と話す。

 高齢者の外出が減れば、孤立化や健康悪化にもつながりかねないため、地元自治会は昨年3月と9月にアンケートを実施。大半の世帯から回答があり、約6割がバスの増便を求めていることが分かった。自治会は市を通じて同社に増便を要請したところ、今年6月18日から試験的に1年間、平日の昼間に往復2便が増やされることになった。

 ただ、せっかく増便されても、利用者が少なければ維持できないため、自治会などは利用者を増やそうと4月26日に乗り方講座を開催。自治会館前に55人乗りの中型バスを止め、参加した高齢者ら30人が乗り込み、同社員らがICカードの使い方などを教えた。

 主婦の白井悦子さん(73)は「運転ができなくなったら、バスを利用したい」。自治会長の宇佐美一生さん(69)は「行政とバス会社が頑張ってくれて、増便を実現できた。利用者を増やすために努力したい」と話していた。

バスの車内で高齢者らに説明する神奈川中央交通西の社員ら=秦野市曽屋

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