八王子:ファミサポ利用伸び悩み 「環境」充実が影響との声も 八王子市

仲介役を務める平井さん

 小学生以下の子どもを有償で地域住民が預かる、八王子市の取り組み「ファミリー・サポート・センター」制度の利用が伸び悩んでいる。施行から20年目を迎える今年、制度は曲がり角を迎えている。

 この制度は、保育園に通う「前後」の預かりや送迎、子どもの病気回復期の預かりなどを、保護者(依頼会員)が、子育て支援に意欲のある20歳以上の人(提供会員)に有償で依頼する取り組みで、市在住の小学生以下の子どもが対象。市の担当者がアドバイザーという形で仲介役を務める。

 1998年10月に、共働き家庭の増加などに対応するため施行され、内容にもよるが通常、平日の規定時間内(午前7時から午後7時)であれば、1時間700円でサポートを受けることができる、というものだ。

 「制度を利用するには、それぞれの会員向け説明会に参加して頂き、提供会員は決められた講習会を修了して頂く必要があります」と、市担当者は説明する。

5年で30%減少

 ただ、制度の利用件数は減少傾向にある。13年度の6648件に対し、昨年度は4649件と、5年間で約30%の減少が見られた。その要因のひとつになっているのが、「提供」が増えていない現状だ。13年度から昨年度まで558人増えた「依頼」に対して、同期間、「提供」は20人の増加にとどまったうえ、市によると実際に活動している会員は200人程度という。

 利用者が増えない現状のなか、市もただ手をこまねいている訳ではない。周知不足と考え、市が発行している広報紙などで周知を図っているほか、制度を紹介するリーフレットを作成し、「提供」登録者を通して地域に配布する考えももっている。10年以上にわたり、「提供」を務めている篠原和美さん(68)は「他の家の子どもを預かるのに不安をもつ方が増えているのでは」と「提供」が増えていかない現状を分析し、「私も最初は不安があったが、多くの子どもたちと接することができて楽しかった思い出しかない」と、業務内容についての周知が不十分なことを残念に思っているという。

「悪いこと、とも言えない」

 制度の利用が減るのは、市内の子育て環境が充実してきたとも言えるのでは、と指摘するのがアドバイザーとして仲介役を務めている平井ゆき子さん(62)だ。近年、自身が体調を崩した時などのトラブル時のみ、制度利用を希望する「依頼」が増えているのだという。「保育園が子どもをみてくれる時間が伸びるなど、制度を利用しなくても済むケースが増え、この制度を『保険』としてみている家庭が少なくないようだ」と話し、制度利用が減ることを一概に悪いこと、と言い切れないとしている。

 6月には、南大沢市民センターで「提供会員」対象の講習会が開かれるが、篠原さんは「『自分の子どもと一緒に預かっています』という30、40代の方も少なくない。『新しい家族ができたよう』と喜んでいる提供会員さんは多い。そのことを知ってもらえれば」と講習会への参加を呼びかけている。(問)八王子ファミリー・サポート・センター【電話】042・648・2157へ。

10年以上、「提供」を務めている篠原さん

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