さよなら富貴屋 103年の歴史に幕 雲仙温泉街の老舗旅館

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 103年の歴史を誇る長崎県雲仙市の雲仙温泉街にある老舗旅館、雲仙富貴屋が6日、閉館した。従業員約40人が最後の宿泊客を見送り、別れを惜しんだ。
 同旅館は1915年創業。同温泉街の中心部に位置し、客室は70室。同旅館は4年前から「健康」をテーマにウオーキングや島原半島内の名所散策などを取り入れた宿泊プランを提供。延べ約9千人が参加するなど、客足は回復基調にあった。
 一方で、建物の老朽化が進み、耐震化への対応も迫られていたため、6日にいったん閉館し、新たに発足する株式会社が事業を引き継ぐ。営業再開の時期は未定。全国で宿泊施設を展開する星野リゾート(長野県)が運営に前向きな姿勢を示している。
 営業最終日となった6日は、約80人が宿泊。午前9時から、客室係や調理担当など従業員約40人が玄関に整列し、宿泊客を見送った。初めての客は壮大な見送りに目を丸くし、常連客は顔見知りの従業員と抱き合い、涙を流して別れを惜しんだ。
 最後のチェックアウトとなったのは、年間30回近く訪れていたという長崎市滑石2丁目の田縁(たぶち)資啓(よしひろ)さん(69)と妻の圭子さん(63)。「みなさんの気配りの良さがとても気に入っていた。今までお疲れさま、そしてありがとう」と目をうるませ、旅館を後にした。その姿が見えなくなるまで、従業員は手を振り続け、感謝と別れを伝えた。

従業員との別れを惜しむ宿泊客=雲仙市、雲仙富貴屋
6日で閉館した雲仙富貴屋=雲仙市小浜町