努力の花 咲き誇る トルコキキョウ初出荷 花き農家に就農した 琴海の奥野さん

 昨年秋、長崎市琴海地区で就農した奥野貴博さん(38)=同市西海町=のトルコキキョウが出荷の最盛期を迎えている。家業ではなく土地もない中で目指した農業。「やっとスタートラインに立てた」と手応えを感じている。
 同市長浦町の国道206号沿いにある4棟(計10アール)のビニールハウス。約3万5千本のトルコキキョウは、4月下旬ごろから白とピンクのかれんな花が次々と開いている。
 収穫や出荷をしながら、1本のトルコキキョウに三つの花が付くように脇芽を取る作業もしているため、忙しさはピーク。「今は時間との勝負」と言いながらも表情は明るい。60代の両親と3人で作業に打ち込み、主に広島、東京・世田谷の市場に出荷している。
 大学卒業後、会社勤めをしたり、美術の勉強をしたりしていた奥野さんの転機は2014年。同市三和地区で受けた農業研修で「努力をしただけ目に見える成果が出る」ところにおもしろさを見いだした。施設園芸を選んだのは「花の種類や栽培の時期が割と自由に決められるから」と話す。
 研修をしながら土地探しを続けた。苦労したが共に公務員をしていた両親の人脈のおかげで借りることができた。国などの補助金も利用して昨年11月にハウスが完成、苗を定植した。「周囲の協力があったからこそ」と感慨深げだ。
 「夢中で突き進めたのは、逆に農業のことを何も知らなかったからかもしれない」。苦労の4年を振り返りながら「1、2年は足固め。その後、規模拡大の方向性を見極めたい」と夢を語った。

「苦労が多かった分、感動もでかいですね」。丹精込めて育てたトルコキキョウを収穫する奥野さん=長崎市長浦町

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