『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 子どもたちの目線で描かれる貧困のリアル

(C) 2017 Florida Project 2016, LLC.

 「フロリダ・プロジェクト」のプロジェクトっていうのは、アメリカにある貧困層の人たちのために作られた団地のこと。映画の舞台になるフロリダはディズニー・ワールドで有名ですが、きらびやかなラスベガスもしかり、近隣にはprojectと呼ばれる貧困地域が存在するのがアメリカの現実なんです。住んでいるのは、富裕層からは遠く置いていかれてしまった人たち。そのほとんどがドラッグや酒の中毒に苦しんでいる。そしてそこには、たくさんの子どもたちも暮らしています。

 母親と一緒に暮らす6歳の女の子ムーニーの視点から描かれるこの作品。スクリーンに映し出される真っ青な空は、私たち大人が見るよりもずっと高いところにあって、大人もすっごく大きくて、子ども時代を思い出します。そんな子どもの目線で見た日々は、大人から見ると辛い現実でも、それが日常だから子どもたちにとっては当たり前のこと。映像から伝わる痛みに胸が苦しくなって、人の温かさには涙が出る。

 監督は、全編iPhoneで撮影した映画『タンジェリン』で話題を呼んだショーン・ベイカーという若手監督。パステルカラーの色彩だったり、ストーリーの伝え方だったり、何もかもがとにかく新しくて、すごい感性だなって本当に圧倒される映画です。★★★★★(森田真帆)

監督:ショーン・ベイカー

出演:ブルックリン・キンバリー・プリンス、ブリア・ヴィネイト、ウィレム・デフォー

5月12日(土)から全国順次公開

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