諫干和解協議 開門義務“無効化”も

 国営諫早湾干拓事業を巡る訴訟で、福岡高裁が3月、開門しない代わりに国の基金案で解決する和解を勧告して2カ月が経過しました。有明海再生に向けた100億円の基金と引き換えに非開門で決着したい国と、和解案に反発する開門派。8日には再び和解協議が予定されていますが、開門派は欠席する構えで、協議は決裂含みです。これまでの経過をおさらいしました。

 -開門派が和解協議を拒否しているのはなぜ?
 今回の和解案は、長崎地裁で国と開門派、開門反対派の3者で協議した経緯があるからです。開門派弁護団は「一度ご破算になった案をもう一度議論するのはおかしい」と反論。有明海再生のためには開門が必要だと考えており、「非開門前提の和解協議に参加することは有明海再生をあきらめることだ」と指摘しています。和解協議そのものを否定していませんが、現状の案で協議に応じる気配はありません。

 -どうして和解協議が打ち切られていないの?
 基金案の運営主体である有明海沿岸4県の漁業団体などが和解協議の継続を望んでおり、高裁はこの点を考慮し協議継続を決めました。これに開門派は「基金案による再生事業は、開門に関係なく実施すべきだ」とし、拒否する姿勢は崩していません。

 -福岡と熊本の漁業団体が早くから基金案を容認していたのに対し、佐賀の団体は慎重だったよね。
 佐賀の団体の中には、国に開門を求める裁判の原告や、諫早湾近くで被害に苦しむ漁業者がいます。非開門方針の基金案を受け入れることは、開門を求める人たちの思いに逆行するため、同じ団体の仲間として、簡単に決断できない背景があるのです。

 -佐賀の団体が基金案を受け入れたのはなぜ?
 有明海の再生の糸口になるのではないかと考えたからです。基金案について国は、あくまで和解成立とセットだとの認識を示しています。これに加え、開門の是非を巡る近年の司法判断は、非開門を支持するものが続いています。和解協議を拒み続けた結果、「開門」と「基金」の両方を失う可能性が懸念されていたのです。有明海の再生を望む福岡と熊本の両団体の説得もあり、1日には3県の団体トップが「開門しない前提の和解協議を進めてほしいとの考えで一致した」との見解を発表しました。

 -開門派は今の状況をどのように見ているの。
 国の一連の動きに開門派弁護団は「基金案を巡り、国が漁業者に“脅し”をかけている」「和解が成立しないのを(協議に参加しない)われわれのせいにしようとしている」などと憤っています。みんなが有明海の再生を望んでいる点は一致していますが、その「方法」を巡って意見が対立している状態が続いています。

 -和解協議が決裂した場合は?
 協議はあと2回予定されていますが、不成立の場合、7月30日に判決が出ます。判決は「国は開門調査をしなさい」と命じた過去の判決の強制力をなくす内容になるとみられています。国に課された開門義務は、開門派にとってよりどころとなっています。これが“無効化”されてしまうのかどうか、大きな転換期を迎えるといえそうです。

© 株式会社長崎新聞社