真のスケールアップへ DeNAに必要な「本当の二遊間、センターライン」

DeNA・倉本寿彦、大和、柴田竜拓(左から)【写真:荒川祐史】

リーグ連覇中の広島には鉄壁の二遊間、一方のDeNAは「まだ固まっていない」

 シーズン開幕から1か月が経ち、セ・リーグは混戦が続いている。17年にリーグ制覇した広島が好調を維持する中、日本シリーズに進出した横浜は5月に入って苦しい戦いが続いている。

 この2チームには大きな違いがある。二遊間、いわゆる「センターライン」の成熟度だ。

 戦前の予想通り、2連覇中の広島は連敗もするが、安定した戦いをみせている。4番の鈴木誠也が故障明けということで、コンスタントにはスタメン出場していないが、強力打線は健在だ。もちろん、打線が大きな武器であるのは言うまでもないが、それ以上に大きな武器になっているのはセンターライン。センター丸、ショート田中、セカンド菊地。三拍子揃った素晴らしいアスリートがしっかりと軸をなしてきた。丸が負傷離脱後も好調の野間が穴を埋めている。

 強い時代のカープは二遊間に素晴らしい選手を揃えてきた。現在の田中、菊地のコンビはかつての高橋慶彦、正田耕三を思い出させる。

「入団直後はやっぱりプロのスピードなどに慣れることを考えた。同い年の菊地、丸がレギュラーとして結果を出していたのももちろん刺激になった。今は試合に出続けて結果を残すことが一番大事。それだけの責任も感じている」

 田中は社会人を経たため菊地と同い年ながらプロ入りは2年遅い。しかしショートのレギュラーをつかみ、特に全試合出場を果たした16年からチームは連覇を果たしている。今やこの3人はチームに欠かせない重要なピースとなっている。

 その強豪カープを17年CSファイナルで破ったのはDeNAだった。その時の二遊間はショート倉本、セカンド柴田。この2人で黄金時代を目指すものと思われていたが、チームはオフに補強を敢行。内外野どちらでも飛び抜けた守備を誇る大和を阪神から獲得。開幕はショート大和、セカンド倉本でスタートした。

「正直、まだうちの二遊間は固まっていない。というか固められていないというのが実情。そういった意味ではいろいろと思考錯誤している。大和が良い動きをしているから今はハマっているけど、決してそれがベストとも思わない。新人の宮本もいる。もちろん倉本、柴田は17年シーズンを通じて出続けた。どういう形が良いのか、探しているというかね」

 打撃練習中もノックバットを手放さない青山ヘッドコーチは語ってくれた。

「ベイスターズの本当の二遊間、センターラインが出来上がってほしい」

「なかなかチームとしては波に乗れていない。こういうところで宮本なんかが起爆剤になってくれればね。これは外野の神里なんかにも言えるけど」

 青山ヘッドの口から出てきたのは、実績のある3人ではなくルーキー宮本。開幕直後は俊足を生かした代走や守備固めでの出場が多かった。しかし風向きが変わったのは4月25日の広島戦、プロ初安打を代打本塁打で記録。「練習を見ていて非常に安定している。先発で使ってどうなるか見たい」というラミレス監督の期待にも応えた。「2番・二塁」でスタメン出場した翌26日には第1打席で本塁打。「塁に出て次の選手につなげようと思った」という通り、攻撃の方でチームの起爆剤にもなった。

 誰が二遊間のポジションをつかむのか。首脳陣にとっては頭の痛い“嬉しい悩み”でもある。しかし、シーズンは絶え間なく動いている。ただでさえ混戦が続くリーグにおいては、1つの負けが命取りにもなりかねない。青山ヘッドは今後どう考えているのだろうか。

「まだシーズンも始まったばかり。投手陣もまだ十二分には揃っていない。でも1つずつだけど勝っているし、いろいろな戦力も出始めている。もちろんのんきなことは言ってられないけど、戦っていく中で今後につながるベストな形、二遊間を見つけ出すしかない。そこから連携などもどんどん良くなっていって、ベイスターズの本当の二遊間、センターラインが出来上がってほしい。それまではチーム全体で戦っていくことだね」

 故障者なども多く、言ってみれば底に近い状態ながらしっかり戦っている。しかし元来は充実した戦力を誇るチームだ。サウスポーを中心にした安定感抜群のスターター。リーグを代表する絶対的クローザーを有するブルペン。日本の主砲を中心に置いた打線。現在はまだ成熟度とまで言えないかもしれないが、ここに鉄壁のセンターラインが加われば……。

 2020年、ハマスタが生まれ変わった時、果たしてDeNAはどこまでスケールアップしているのだろうか。まだまだDeNAには大きな伸びしろを感じる。

(Full-Count編集部)

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