患者や家族つながろう 若年性認知症の福田さん 国内初の当事者団体に加入 「集いの場」5月から九州各地で

 若年性認知症を患いながら、病気への理解を呼び掛け、認知症患者や家族の相談を聞く活動を続ける福田人志さん(55)=黒髪町=は1月、国内初の当事者団体「一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ」(東京)に入った。九州で唯一の会員として活動を九州全域に拡大。集めた声を政策に反映させるよう団体を通じ国に提案する。暮らしやすい世の中にするために、福田さんは新たな一歩を踏み出す。

 ワーキンググループは2014年に設立。必要な支援や居場所づくりにつながるよう、当事者の集まりや講演活動、情報発信に力を入れる。政府とも意見交換を重ね、政策提言をしている。国も15年に策定した認知症の国家戦略(新オレンジプラン)で「本人や家族の視点重視」を初めて盛り込んだ。

 福田さんと、共に活動するパートナーの中倉美智子さん(64)は5月から「フレンズ壱○八(いちまるはち)」という看板を掲げ、支援が行き届かない町を訪ねて回る。福田さんによると、認知症当事者は各地で開かれる「認知症カフェ(オレンジカフェなど)」に感謝しつつも「『認知症』という枠にはめられている感じでいたたまれなくなる」と抵抗感を持つ人が多いという。

 また、介護がすぐに必要ではない人も多い若年性認知症患者にとって、診断後すぐに行政からデイサービスやヘルパーといった介護保険サービスが案内されることで、意欲やプライドが傷つく人もいるという。2人は「本人や家族はもちろん、認知症患者と接したことがない人など幅広い世代の人と、自由で楽しい時間を共有したい」と期待を込める。

 「行動する過程で『認知症の人は何もできない』という偏見はなくなる」と語る福田さん。そのためには、当事者の声が欠かせないと訴える。「まずは知り合うことから始めましょう」。福田さんと中倉さんは、人とのつながりが「認知症の人も暮らしやすい社会」に変わるきっかけになると信じている。

 ■11、25日は川棚
 
「壱○八」は▽11日午後1時半~3時=東彼川棚町栄町の交流スペース「ハッピーハウス」▽25日午後1時から=川棚町百津郷の「井戸端みんなでワハハ」-で予定されている。誰でも参加できる。問い合わせは中倉さん(電0956・32・8879)。

◎「佐世保の茶話会で元気に」/毎月20人、励まし合い笑顔

 福田さんと中倉さんが佐世保市内で毎月開いている茶話会「峠の茶屋」には、毎回20人ほどが集まる。その中には、すっかり常連になった若年性認知症患者の姿もある。江藤初代さん(64)=木風町=と、金井田正秋さん(63)=松浦市鷹島町=は「ここに来ると元気になる」と笑顔で話す。

 江藤さんと金井田さんは、福田さんを交えて互いに近況を報告し、好きな車や小説の話で盛り上がる。「できることは多いのに『何もできない』と言われるとつらい」と本音を漏らすこともある。
 「できないことがあったら人に聞いて、にっこり笑って『ありがとう』って言えばいいのよ」と励まし合ったり、「いずれ分からなくなっても、いつでも『初めまして』でいいよね」と笑い合ったりしている。

 江藤さんは「2人に出会い、通る道が同じだと思えたら楽になった」と笑顔。金井田さんは「外出できないと思い込まず、人と会って話すのが一番。9年間症状は進行せず落ち着いている」と弾んだ声で話した。

「知り合うことから始めましょう」と話す福田さん(左)と中倉さん=佐世保市内
談笑する(左から)金井田さん、福田さん、江藤さん=佐世保市内

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