橘神社に名工の輝き 銅板9000枚 半世紀ぶり屋根改修中

 桜の名所などで知られる長崎県雲仙市千々石町の橘神社で、屋根のふき替え工事が着々と進んでいる。約50年ぶりの改修で、約9千枚の銅板にふき替える作業には職人たちの技術も光り、「後世に誇れる仕事をしたい」と意気込む。
 同神社は1940年建立。春には約千本の桜が咲き、年末年始には諏訪神社(長崎市)に次いで県内2番目の参拝客でにぎわう。
 約50年前に本殿や拝殿などの屋根は現在の鉄板に変更したが、5年ごとにペンキで朱色に塗り直すなど定期的な補修が必要で、近年は雨漏りも発生。木製の支柱が腐食するなど老朽化も進んだため、2年後に控える鎮座80周年事業としてふき替えを決めた。
 ふき替えには鉄よりも風雨に強い銅板を使用。改修面積の約650平方メートルに、60センチ×22センチの銅板約9千枚を張り合わせていく。裾に行くほど弧を描いて広がる屋根の形状には高い板金技術も必要で、施工は長崎市の建築業、屋根工房が担う。「現代の名工」にも選ばれている同社の折式田信寛会長は「県内でこれほど大規模のふき替えは近年例がない。技術をしっかり伝承しながら、後世に誇れる仕事をしたい」と話す。
 工事は4月に始まり、6月末に完成予定。銅板は始めは光り輝く褐色(かっしょく)だが、数カ月もたつと青銅器のように緑青(ろくしょう)と呼ばれる独特の深みを持つ色に変化する。橘昌樹宮司は「色が深みを増すほどに50年、100年後も愛されるように守り続けたい」と話す。職人の顔をきらきらと照らす銅板たちは、静かに完成の時を待つ。
 橘神社奉賛会では工事期間中、屋根に張る銅板の裏に名前や願い事を書く「銅板奉納」を募集している。1口2千円。問い合わせは同神社社務所(電0957・37・2538)。

屋根のふき替え工事が進む橘神社=雲仙市千々石町

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