NPBは「4Aレベル」って本当!? 米メディアが“都市伝説”を検証・解説

NPBは「4Aレベル」か?二刀流・大谷の出現で米メディアが検証・解説【写真:Getty Images】

分析サービスNEIFIでNPB選手の予測WAR値を算出

 アメリカでは、日本プロ野球(NPB)のレベルを表現する時に「4Aレベル」という言葉がよく使われる。言ってみれば、マイナーリーグの最高レベルである「3A」以上ではあるが、メジャーレベルまでは達しないということ。はたして、その表現は正しいのか。米スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」では特集を組み、日本人メジャー選手が多く誕生しない理由や、「4Aレベル」と定義づけることは間違っている理由などを、NPBの制度や文化の違いなどを紹介しながら検証している。

 特集では、NEIFIという分析サービスを利用し、米データ分析サイト「ファングラフス」や「ベースボール・リファレンス」で用いられているWAR算出法を基に、昨季のNPB選手の成績から今季の予測メジャーWAR値を算出している。WARとはセーバーメトリクスの指標の1つで「同ポジションで代替可能な選手に比べてどれだけ勝利数を上積みできたか」を示すもの。つまり、その選手がどれだけ勝利に貢献しているかを示す指標だ。昨季のNPB選手の成績から今季の予測メジャーWAR値を計算すると75になったという。そこからメジャー球団でプレーした経験を持つ選手のWAR値を引き、メジャー経験がまったくない選手だけの予測WAR値を算出すると62となり、アストロズの今季予測WAR値(54)を凌いでいたそうだ。

 もちろんWAR値の算出に用いられた選手の人数に差があるなど、NPBとアストロズの予測WAR値を単純比較することはできないが、記事では「日本に才能ある選手がたくさんいることは間違いない」と指摘。メジャーでの活躍する可能性のある選手が、どうして日本にとどまるのか。その疑問に対して、文化の違い、そしてシステムの違いという大まかに分けて2つの理由を挙げている。

 始めに、文化の違いとして、日本では「終身雇用」の意識が広く浸透している事実を指摘。一度就職した会社に定年まで勤める人が主流であり、野球選手もその傾向にあることを伝えている。その1例として、2016年7月に海外フリーエージェント(FA)権を獲得した巨人の坂本勇人は権利を行使しなかったと指摘。2015年オフに複数年契約を結んでいたために行使しなかったが、記事では「日本のデレク・ジーター」とも呼ばれる坂本は巨人に残り続けるであろうと予測している。

NPB選手が海外FA権を手に入れるには9年の1軍登録が必要

 また、一般論として日本で保証されたスターの座を捨て、メジャーで出場機会を求めてポジション争いをすることに魅力を感じる選手が少ないであろうとも予測している。特に、NPBトップレベルの選手でなければ、アメリカではマイナー契約しか結べない可能性もあり、そこに魅力を感じない選手も多いと見ている。

 NPBで得た地位や待遇を捨ててまでメジャーに飛び込む選択を取らない背景には、NPBのシステム上の問題があることに注目。NPBからメジャーに移籍するには、1軍登録日数が9年に達した時に生じる海外FA権を手にするか、所属球団の了承を得てポスティングシステムを利用するしかない。記事では、巨人やソフトバンクがポスティングシステムには好意的な立場ではないため、「トモユキ・スガノやコウダイ・センガら日本で傑出した2投手がMLBに来る道を阻んでいる」とも説明。かつて斎藤隆や上原浩治のように30歳を超えて海を渡り成功した例もあるが、NPBの制度は選手が日本で旬の時期を過ごすような仕組みになっていると指摘している。

 特集では、日本で海外FA権を取得する選手の平均年齢が33歳であること、メジャーでは30歳を境に出場機会が減ることなども資料を添付して説明し、NPBの選手にとってメジャー移籍が一筋縄ではいかない現状を伝えた。

 二刀流・大谷翔平選手の出現により、日本からさらなる注目の才能が海を渡る期待も高まる。いろいろな条件をクリアして、次にメジャー移籍を果たすのは誰なのか。そして、メジャー移籍を望むNPB選手が旬を逃さずに願いを叶えるシステムが整備されることはあるのだろうか。興味深いところだ。

(Full-Count編集部)

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