少女像 愛らしく 大正の女流画家・栗原玉葉 画帖と掛け軸発見 埋もれた画業に光

 大正時代に活躍した長崎県出身の日本画家、栗原玉葉(ぎょくよう)(1883~1922年)の作品が県内で相次ぎ見つかっている。12月には長崎歴史文化博物館(長崎市)で玉葉に焦点を当てた企画展が予定されるなど、人気画家だった玉葉の画業に再び注目が集まりそうだ。
 玉葉は南高来郡山田村(現雲仙市吾妻町)生まれ。長崎の梅香崎女学校卒業後に上京した。女子美術学校で学び、寺崎廣業(こうぎょう)に師事。幼い少女や女性像が得意で、1913年には当時最も権威のあった公募展「文展」で初入選した。その後も連続入選を果たすなど、女流画家の第一人者として活躍していたが、39歳の若さで亡くなった。
 玉葉の作品は現在80点ほど確認されており、行方の分からない大作も多いという。今回見つかったのは、玉葉の絵が収録された画帖(ちょう)と掛け軸。それぞれ雲仙市国見町の個人宅にあり、歴文博の五味俊晶研究員らが玉葉の調査研究をするなかで本物と確認した。
 画帖に描かれた玉葉の作品が見つかったのはこれが初めて。縦21センチで、さまざまな作家の計20作品が収録され、玉葉は天女と童女の2作品を描いている。玉葉のほか、大久保玉珉(ぎょくみん)や萩原魚仙(ぎょせん)、小林観爾(かんじ)ら近代の本県画壇を代表する作家も作品を寄せており、その点でも貴重なものという。
 掛け軸は縦約115センチ、横約42センチ。愛らしい着物姿の少女が描かれ、保存状態も良い。持ち主の松本高明さん(75)の父が美術品好きで、長年自宅にあったという。12月の歴文博の企画展ではそうした個人所蔵の作品も多く展示する予定。五味研究員は「栗原玉葉の知名度は当時に比べて低いが、県内には多くの作品が残っているのではないか。展覧会などが一つのきっかけになって、埋もれた作品が見つかるとうれしい」と話している。 

画帖に収録された童女の絵
雲仙市国見町の個人宅で確認された玉葉の掛け軸

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