スポーツeye / 被爆地のスポーツの力 V・ファーレン長崎 心打つひた向きなプレー

 「V・ファーレン長崎は見ていて応援したくなるチームだよね」

 先日、アウェー会場でスポーツ紙の記者から、こう声を掛けられた。J1上位チームのようにスターがいなければ、派手なパフォーマンスをやるわけでもない。でも「ハードワークをいとわないひた向きなプレー」が心を打つのだという。地元ファンからはよく聞く言葉だったが、客観的な立場の人の意見は説得力があり、素直にうれしかった。

 その象徴的な例が先月末、広島をホームに迎えた「平和祈念マッチ」。両チーム通じてイエローカードゼロのすがすがしい試合になった。折り鶴作製などのイベントにも、来場者や選手が積極的に参加。会場は平和だからこそスポーツができるという思いを共有できる空間になった。

 戦争、原爆…。ともすればマイナスのイメージがある長崎だが、ひた向きなV長崎というフィルターを通せば、平和への前向きなメッセージをより発信できる。被爆地のスポーツの新たな可能性を見た気がした。

 プロスポーツは華やかで格好いい。でも、それ以前に、スポーツは人の心を動かす力を持っている。それをあらためて確認させてくれるV長崎。地元に、そして全国に受け入れられている一つの要因だと思う。

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