DeNAに現れた期待の俊足ルーキー神里 犬をも振り切るスピードで起爆剤に

DeNA・神里和毅【写真:荒川祐史】

社会人では侍ジャパン入り、アジア大会優勝に大きく貢献

 若い力をフルに生かした勢いある戦いを続けるDeNA。2006年から10年連続Bクラスだったチームは、A.ラミレス監督の指揮の下、就任1年目の2016年に3位となり、Aクラス入りを果たすと、昨季は同じく3位ながらクライマックスシリーズで勝ち抜き、19年ぶりの日本シリーズ進出を果たした。1998年以来20年ぶりの日本一を目指す今季、また1人活きのいい若手選手が現れた。ドラフト2位ルーキーの神里和毅外野手だ。

 沖縄出身の24歳。糸満高から中央大、日本生命を経て、今季からDeNAに加わると、キャンプで熾烈な外野手争いを勝ち抜いて、開幕戦に「7番・右翼」でスタメン起用された。本拠地・横浜スタジアムで迎えた3月30日の開幕戦。「名前を呼ばれて出ていった時はフワフワしていました。ライトで守っていても、その試合はずっとフワフワしていましたね」と初々しさを隠さないが、満員に埋まるハマスタでプレーする気分は「今まで味わったことがないもの」と目を輝かせる。

 ここまでの道のりは決して順調ではなかった。中央大では1年春からベンチ入りし、走攻守の3拍子揃った外野手としてプロスカウトの注目を集めた。4年で主将を務めると、秋季リーグでは東都大学野球のベストナイン入り。プロ志望届を提出したが、指名漏れする悔しさを味わった。

「実際にどこにも指名されなくて、本当に悔しかったです。社会人に行って、2年後は絶対上位で指名されるように頑張ろうっていう強い気持ちが出ました」

 日本生命では会社の看板を背負いながら戦い、「技術もそうなんですけど気持ちの面で成長できました」と振り返る。巧みなバットコントロールと俊足を生かして存在をアピール。2017年10月には侍ジャパン社会人代表に選ばれ、「第28回BFAアジア選手権」に出場。12打数6安打9打点の大活躍でベストナインと打点王に輝き、優勝の原動力となった。

 社会人時代には、視覚情報センター代表を務める田村知則医師から目の使い方のアドバイスを受け、セールスポイントでもある俊足に磨きをかけた。「1点を凝視すると体が固まって重心が浮いてしまう」と、盗塁はできるだけリラックスした状態からスタート。「投手が動いたら全部いくっていうくらいの気持ちでいます」という積極的な姿勢で、今季はすでに9盗塁をマークし、打線の起爆剤となっている。

俊足でDeNAの攻撃のカギに

 俊足は“英才教育”の賜物でもある。

「父が陸上をやっていたので、小さい頃からやらされていたんです。はい、やっていたんじゃくて、やらされていました(笑)。小学校低学年の頃から、学校から帰ると姉2人と一緒に姉弟3人で、ラダーを使った瞬発力を上げるトレーニングとかやっていましたね。当時は嫌だったんですけど、今となってみれば、やっておいてよかったです」

 トレーニングの成果か、小学生の時には犬に走り勝つ、というエピソードまで生んだ。「たまたま友達の家に行って、玄関を開けたらでっかい犬と目が合ったんです。これはマズい、と瞬時に走って逃げたら、逃げ切れましたね(笑)」と事もなげに語るが、その足が今季DeNAで攻撃のカギを握ることは間違いない。

 開幕から1か月半が経ち、一定の手応えを感じると同時に、多くの課題も見つかった。「個人個人の意識が高い」というプロの世界。「一瞬何が起きたか分からなかった。なんだかよく分からない、言葉で表せない感情でした」というドラフト指名時の感動は胸の奥にしまい、プロ野球選手としての成長に全力を注ぐ。

「プロの投手は球の質が違う。社会人時代に捉えられていたスピードボールが、今は空振りすることもあって。思い切って筒香さんに打撃について聞いてみたりもしました。自分はボールから目を切るのが早いから、もう少しボールを長く見てみてはと、アドバイスをいただきました」

 目指すは「打って走ってしっかり守って、全部が高いレベルでできるプレーヤーになって、ファンに愛されるような選手になりたいです」と言い切る。自身に敢えて高い目標を課すのは、それをクリアできるだけの自信があるからだ。

「自信がないとやっていけない。そこは目指していきたいなって思います」

 そう語った目力の強さは意思の強さにも通じるだろう。踏み出したばかりのプロ生活。1歩1歩積み重ねながら、長らくハマで愛される存在に成長したい。

(Full-Count編集部)

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