未病バレー・ビオトピアが始動 特報インタビュー 「賛同してここにいる」 ブルックスHD社長 小川裕子氏 南足柄市・大井町・松田町・山北町・開成町

 神奈川県が提唱する「未病改善」を実践する大井町山田の「未病バレー・BIOTOPIA(ビオトピア)」が4月28日、第1期オープンした。運営主体の株式会社ブルックスホールディングス(本社・横浜市青葉区)の小川裕子社長=写真に話を聞いた。

 -2012年に旧第一生命ビルを取得した。当時の経緯は

 ファミリービジネスの事業継承で2008年に社長に就任し、事業の海外展開に取り組んでいたところ、持ち株会社の社主、小川武重(父)がビルをお引き受けすることを決めた。当時は社主の思いが120%だった。

 -「未病」の事業に参加するきっかけは

 ビルを購入した当時は「未病」という話はなく、2年ほどの間は無料喫茶や売店を営業してきた。そのなかでこの場所の生かし方を考えていたところ、黒岩知事が「未病」を提唱し拠点づくりの事業計画を公募することを知った。

 運動や健康に沿った事業展開を検討していたため、その考えに賛同し社内で「コンペに参加してみよう」という流れになった。そういう点においては、神奈川県の黒岩知事や大井町の間宮町長とも互いのニーズが合ったといえる。

シリコンバレー

 -「未病バレー」とは

 通信販売でやってきた当社は通信と販売の両方に資源がある。電話やハガキ、ファックスやインターネットなど通信における技術革新が進むなか、映像技術の企画・開発を行う会社を2010年に立ち上げた。その当時、米国のシリコンバレーに足を運び、通信技術のベンチャーが次々と立ち上がっていく様子を目の当たりにした。

 健康にまつわる「未病」をテーマに有機的な循環を構築したいと考え、名称にその思いを込めた。これが後に戦略的未病エリアを「未病バレー」とすることを決めるきっかけとなった。

注目される日本

 -「未病」の将来性はどう考えているか

 日本人の暮らしにまつわる技術は過去にも海外諸国から感謝されている。今や精神論や情緒にも世界が注目している。訪日外国人の増加もありようやく光が当たってきたのではないか。

 海外から日本を見てきたフランスやポーランドの元外交官とともにプロデュースし、有機栽培のお茶とおにぎり(米)を販売する店を2016年にパリで出店した。パリには有機の品物だけを扱う市場もある。幸いにも20年の東京の次、24年の五輪がパリで開催される。その流れも幸運だと思う。

 敷地内で行う温泉の掘削も、日帰り温泉のようなレジャー施設ではなく、養生や湯治をイメージしている。

 これから出会う企業とのコラボにもよるが健康へのアプローチにはベンチャー的な発想が強いが、展開や発展の可能性は大いにある。

脇目もふらず

 -県や町など行政との関係はどうか

 「未病」の旗印がなければここに行きついていない。健康にかかわる産業をこの地から新たにつくること(県西地域活性化プロジェクト)に賛同している。

 たとえ賛同した人たちが集まっても合議制で物事を決めたり「これをやってください」と言われたことをやっていては成功しないと思う。

 行政や地域にもニーズがあることは分かったので、それらを一度こちらサイドでもんで、どういう風にアウトプットを作ろうか、そのプロセスがどう生まれているかにかかっている。

 この箱を作って、箱に置くプログラムにも賛同して頂いているところを見ると、受け入れられているとは感じる。それが今の時点での結果だと思う。自律や自戒があってこそ、その先につながる接点がでてくるのではないか。賛同し、脇目もふらずにやっている。

県西の入口に

 -今後の抱負は

 私たちはビジネスに必要な様々な要素をもつ神奈川県に拠点を持っている。ブルックス本社がある横浜市青葉区は進出当時から女性が社会に進出する先駆け的な地域だった。当社の従業員はおよそ9割が女性でパートから取締役になった社員もいる。そうした意味からも休眠資源の女性をどう活用するかも未病バレーにおける大きなテーマといえる。

 ここでは未病に取り組む人みんなが主役になれる。県西地域の入口として、県西地域にかかわるものを一生懸命集め、ヨーロッパ型の発想を持ってショールームのような場所にしていきたい。

ブルックスHD

 1968年に茶類・乾物の卸売業「(株)幸修園」を設立。卸売のほか電話やハガキによる受注販売を手掛けドリップバッグコーヒーで通信販売事業の業績を伸ばした。従業員数は4月末現在で1020人。2012年に大井町山田の旧第一生命保険大井事業所、土地約60万平方メートル・18階建てのビルを約20億円で取得した。

 15年に大井町と策定した未病の戦略的エリアを象徴する拠点施設の事業基本計画が県に採択され、16年7月に県と協定を締結した。官民協働のプラットホームとして「未病バレー・BIOTOPIA(ビオトピア)」の整備に着手。このほど第1期オープンを迎え、21年の全面オープンに向けて敷地内の温泉掘削工事も進めている。

※小川裕子氏…高校進学と同時にスイスへ単身留学。カナダ・バンクーバー、アイルランド、グアテマラを経て帰国し、2008年に社長に就任。

本館南側のマルシェ(上)と和食レストラン(下)
マルシェの店内

© 株式会社タウンニュース社