かんころ文化を後世に

 独特の食感とサツマイモの素朴な甘さがくせになる長崎の伝統菓子「かんころ餅」。こたつに入って焼きたてをハフハフ食べる、家族だんらんの時間を育んできた。「このままではなくなるかもしれない」。そんな危機感を共有し、後世に残そうとする人がいる。長崎県佐世保市内で50年以上作り続ける菓子店「草加屋」社長、髙木龍男さん(54)ら3人は、県が2015年度から3年かけて取り組んだ「長崎かんころ餅プロジェクト推進事業」の集大成として、かんころ文化を後世に伝える教材を作った。
 取り組むのは髙木さんと、市内在住の絵本作家、にしむらかえさん(43)、新上五島町教委文化財課係長、髙橋弘一さん(59)。
 教材は「長崎かんころ餅」と題したB5判。カラー8ページで絵本風に仕上げた。五島列島の小中学校で配り、県内の物産店にも置く。
 にしむらさんが、ほんわかとした絵と文で物語を書き下ろした。主人公は都会に住む女の子。祖母が送ってくれるかんころ餅に興味を持ち、五島列島を訪ね芋作りから餅ができるまでをたどる。髙木さんは、ライフワークとして追い続ける芋農家の姿を写真で紹介。髙橋さんは歴史的観点から成り立ちを解説している。
 教材の問い合わせは県企業振興課(電095・895・2637)。
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 「知られざるかんころ餅の世界」が14日から21日まで島瀬美術センター(島瀬町)で開かれる。にしむらさんの原画やかんころ作りの道具を展示する。▽19日=午前11時と午後1時から髙橋さんが講演。午後1時半から髙木さんと、にしむらさんを加えたトークセッション▽20日=午前11時と午後1時から干し芋やかんころ餅の試食会がある。無料。

 ◎かんころ餅

 サツマイモを薄く切り、ゆでて天日乾燥させた「かんころ」が主原料。サツマイモが主食だったころに家庭用の保存食として作られた。貴重だった米のかさ増しをするため、水で戻したかんころを混ぜて生まれた。生産地の五島列島や北松小値賀町では過疎化や農家の高齢化が進み生産量は激減している。

かんころ文化を後世に伝える絵本風の「長崎かんころ餅」

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