【MLB】稀代の安打職人イチローが苦しめられた投手とは…米メディアが特集

マリナーズ・イチロー【写真:Getty Images】

イチローが最も得意としたのはシーリー

 マリナーズの会長付球団特別補佐に就任し、今季公式戦に出場しないことが決まったイチロー外野手。メジャー18年のキャリアで3089安打を重ねたレジェンドは、メジャーでキラ星の如く輝くエースを華麗なバット捌きで攻略してきた。一方で、説明不可能なほど苦手にしていたという「二流の先発5番手」の存在が米国で注目を集めている。

「どういうわけか、イチローを攻略した投手たち」と特集したのは、米スポーツ専門誌「スポーツ・イラストレイテッド」だった。

 メジャーデビューした2001年に新人王とMVPを同時受賞し、10年連続で200安打を達成した日本の誇るヒットマシーン。イチローが現時点で記録するキャリア通算打率は.311で、1万打席以上立った選手ではメジャー史上18位の成績となっている。

 さまざまな投手がイチローのバットに屈してきた。最低25打席以上対戦した中で最大の犠牲者は、オールスター出場2度の右腕アーロン・シーリーで、対戦打率.632をマークしている。球宴選出1度で13年にはソフトバンクでプレーした右腕ビセンテ・パディーヤは打率.500、シドニー・ポンソンも打率.480と打ち込まれている。アストロズの剛腕ジャスティン・バーランダーも打率.303の数字で、背番号51にバットでねじ伏せられた。

 対照的だった投手たちもいる。記事では「イチローが攻略できなかった男たちも存在した」と記し、その筆頭として右腕ジェレミー・ヘリクソンを紹介。「最大の名声はキャリア69勝69敗という成績」だが、イチロー相手は対戦打率.148、27打席4安打に抑えており、25打席以上対戦した先発投手の中ではイチローを最も攻略した投手だという。救援も含めると、かつてエンゼルス守護神として君臨したフランシスコ・ロドリゲスが対戦打率.074と圧倒している。

 他にも、アスレチックスなどで活躍したリック・ハーデンが打率.192、エンゼルスなどで活躍したC.Jウィルソンも打率.196と、イチローを打率.200以下に抑えこんでいる。

イチローの最大の天敵は…

 だが、イチローが苦手とした“天敵”は、現在メキシコリーグのレオネス・デ・ユカタンに所属する右腕だったという。

「本当の意味でビックリ仰天なのはチャド・ゴダーンだ。お忘れの人がいるかもしれないが、彼は2003年から13年までメジャーで二流の先発5番手とロングリリーバーとして11年間過ごした」

 メジャー通算45勝44敗で、通算防御率4.44の右腕こそ、背番号51を不可解なほどに抑え込んでいたキラーだと紹介している。ゴダーンと対戦した打者たちは通算打率.267、出塁率.348、長打率.420という成績だったが、イチローは31打席で打率.207、出塁率.258、長打率.241という成績。ヒットが打てないだけではなく、出塁することもままならない状況だったことがわかる。

「いかなる秘密か、トリックや魔法を用いて、ゴダーンがいともたやすくイチローを屈服させたのか、我々は知る由もない。先発投手やリリーフ投手を苦しめてきたが、数々のビッグネームや剛腕がいる中、ドラフト34巡目指名で複数球団を渡り歩いた、ごく普通のチャド・ゴダーンをなぜ攻略できなかったのか。イチローが振り返る姿を想像するのは愉快だ」

 特集でも原因は見出せず、首をひねるばかり。結局のところ、イチロー自身も不思議そうに要因に思いを馳せる姿を思い浮かべ、クスリと笑うことしかできないようだ。「二流の先発5番手」と散々な評価をされたゴダーンだが、イチローを最も苦しめた男として注目を浴びたことが最大の功績になったのかもしれない。

(「パ・リーグ インサイト」編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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