佐賀県反対 新幹線長崎ルートの全線フル規格

 九州新幹線長崎ルートの新鳥栖-武雄温泉間の整備方法を巡り、佐賀県の山口祥義知事は11日、与党検討委員会に出席し、全線フル規格での整備は財源負担が多額になるとして、反対する意向を伝えた。長崎県やJR九州は与党検討委に全線フルでの早期整備を求めており、立場の違いがあらためて鮮明になった。

 与党検討委の関係者への意見聴取は今回で終了。今後、委員だけで協議し、8月の予算概算要求前までに結論を出す。山本幸三委員長は終了後、今後の進め方について「財源負担などをさらに精査して議論を進める」と話した。フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の導入は「事実上無理だと(検討委の)みんなが理解している」と述べ、選択肢から外れていることを明らかにした。

 山口知事は検討委で、全線フルにした場合の佐賀県の財源負担が約2408億円になるとの独自の試算結果を示し「受け入れられない」と表明。長崎ルート整備は、佐賀県の意思や長崎、佐賀両県の合意が大前提だとし、結論が全線フルに向かうことをけん制した。

 その上で2022年度の暫定開業と肥前山口-武雄温泉間の全線複線化の確実な実施を求めた。

 終了後、記者団にも全線フル整備について「現実的でない」とし、JR九州や長崎県が求めていることに「すごく困惑しているし、違和感がある」と述べた。

 与党検討委は、全線フル、ミニ新幹線、FGTの3案の中でどの選択肢があるのか聴取する考えだったが、山口知事はどの案がいいのかは示さなかった。

 ■佐賀県の山口祥義知事 一問一答/財源負担できる状況にない 長崎県要望に困惑

 与党検討委の終了後、取材に応じた山口祥義知事の発言は次の通り。

 -どんな意見を言ったのか。

 特に2点申し上げた。1点目は、これまで長崎と佐賀はいろんな合意に基づき、前に進んできた。今回はそういったことがなされていない。整備新幹線は地元の意見が合致してなし得るものだという話をさせてもらった。もう1点は、合意、約束したことは守るという姿勢は持ち続けたいということ。2年前の6者合意などをみんなで守っていくことが信頼の礎だという点。

 -与党検討委からの主な質問は。

 特に財源問題が中心だった。全線フル規格の場合の整備区間は全て佐賀県内。ミニ新幹線も検討するべきではないかという意見も出た。われわれとすれば、県民が納得するかどうかがポイント。これまでも県内を2分するような意見の中で合意がされてきた。何か新しい枠組みというものが納得できるものであればいいが、そうでなければとにかく今は、2022年度の暫定開業について長崎とも連携し、全力で効果が出るようにやっていくことだ。

 -全線フルの財源負担に難色を示したということでいいのか。

 そういう状況ではないということはあらためて強く申し上げた。

 -FGTに代わる新たな整備方針について、知事から考えを示したのか。

 私からはまったくない。佐賀県はこれからやらなくてはいけないことがたくさんある。その中で耐えうる計画かどうかを考えさせていただかないといけない。

 -JR九州や長崎県は全線フルを要望している。

 そういう状況にあると思っていない。現実的ではない。すごく困惑しているし、違和感がある。

与党検討委の終了後、「全線フル規格は現実的でない」と話す山口知事=衆院第2議員会館

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