悩めるソフトタイヤ。可夢偉「心のショックがデカすぎる」、石浦「なんて日なんだ!」《スーパーフォーミュラ予選あと読み》

 予選Q1セッションでトップから17番手までのタイムがわずか0.592秒という僅差の戦いとなったスーパーフォーミュラ第2戦オートポリス。Q1突破の14番手までもトップから0.497秒と、かつてない接戦の勝敗を分けた要因として、ソフトタイヤの難しさとアタックまでのウォームアップが挙げられる。

 ディフェンディングチャンピオンのP.MU / CERUMO · INGINGは、土曜予選の練習走行の走りはじめでフロントにソフトタイヤ、リヤにミディアムタイヤを装着して走行。予選に備えてソフトタイヤをスクラブするのが目的だったが、それは予選でのウォームアップをアウトラップの1周に定め、計測1周目にアタックをすることを前提としていたため。

 だが、結果として、この決め打ちがアダとなったとも言える。ピークが1周しかもたないソフトタイヤは、そのグリップを最大限に発動させるためにしっかりとウォームアップを行わなければいけないが、そのウォームアップで前のクルマに引っかかるなど自分のペースでタイヤを温めることができなければ、わずかコンマ1〜2数秒の差で順位が大きく変わり、ライバルの後塵を拝すことになる。

「ウォームアップランの時に、遅れてコースインしてきたクルマに引っかかってしまって、アタックに入った時にはセクター1でタイヤの温まりが充分ではなかった。アタック中のセクター3でもウォームアップ中のクルマに引っかかってしまった」と、予選を振り返るのは、まさかのQ1ノックダウンとなってしまった国本雄資(P.MU / CERUMO · INGING)。

 チームメイトでディフェンディングチャンピオンの石浦宏明も「アウトラップから全開でいくつもりだったんですけど、コースインした時に前のマシンがゆっくり目のペースで、温めるペースが違ってタイヤに思ったほど熱を入れられなくて、セクター1が良くなかった。結果的に1000分の1秒まで同じだったドライバーが明日、1位からスタートすることになって、そう考えると『なんて日なんだ!』と」

 石浦はまったくの同タイムでQ2敗退してしまった悔しさを表すと同時に、ソフトタイヤのウォームアップの難しさにも触れた。

「結果を見れば、2周目アタックの方がセクター1からタイムが出ていたので、2周目のアタックの方が正解だったのかなと。どちらがいいのかはやってみないとわからないですけど、僕らは賭けに外れたということですね」と予選日を振り返る。

 また、セルモのふたりとは違った形でソフトタイヤに悩まされることになったのが、小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)だ。

 可夢偉は平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)と同じく、アウトラップから計測2周目でアタックを行い、予選Q2では2番手にコンマ3秒差をつける1分25秒799というコースレコードで圧倒的なトップタイムをマーク。一躍、予選ポールポジションの大本命となったが、直後の予選Q3ではまさかの再下位となる8番手。しかも、予選Q2よりも約1秒タイムが遅くなっていた。

「予選Q2も最終セクターで前のクルマに引っかかってコンマ1秒くらい損していたんですよ。だからQ3ではそこそこ余裕があるのかなと思ってQ2と同じようにアタックした結果、全然、1コーナーからグリップがなかった。別にアタックを失敗したとか、トラフィックに引っかかったとかじゃないです。単純に全然、グリップがなくて正直、何が起こったのか分からない」と予選後に戸惑いを見せる可夢偉。

「セットアップは若干リヤウイングのダウンフォースを増やしましたけど、ほとんど同じレベルで、それが問題じゃないくらいグリップしなかった。アタックを失敗せずに1秒遅れるのは、今までないです。Q2のレコードタイムよりも、心のショックがデカすぎます」

 予選Q2からQ3にかけて、外的な条件はほぼ同じ。わずかに気温が下がったとは言え、その変化がタイムにどこまで影響したのか。たしかに、予選Q2とQ3のタイムを比較すると、タイムアップしているドライバとタイムダウンしているドライバーが入り乱れている。それぞれにさまざまな理由があるだろうが、今シーズンのソフトタイヤは、なかなか一筋縄ではいかないクセ者なのかもしれない。

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