官民一体、観光地経営へ 「箱根DMO」設立 事業者、地域超え情報集約

 一般財団法人「箱根町観光協会」がこの春、官民一体で箱根の観光振興を図る組織としてDMOを設立、協会の名称も「箱根DMO」に一新した。観光客のデータ分析などを目的に、外部から人材を招聘(しょうへい)。「観光地そのものを経営する」との視点で民間事業者と連携しながら、かじ取り役を担う。箱根山の火山活動が活発化した3年前、情報発信を一元化できなかった課題の克服も狙いにある。 

 DMOは観光経営(マーケティング)組織の略称。行政や住民、民間事業者など町ぐるみで地域の「稼ぐ力」を引き出すことを目指し、4月1日に設立した。

 誘客や宣伝といった従来の業務に加えて、観光客の消費額や満足度調査などの情報を集約、分析する事業に重点を置く。訪日外国人らの消費行動などを探るマーケティングのため、リクルートライフスタイル、楽天、JTBの3社から出向者を迎え入れた。

 分析したデータは事業者などに提供。満足度向上などにつなげていくほか、町にも提言する。高橋始専務理事は「単に入り込み客数増を目指すのでなく、どうすれば消費単価が増え、町が潤うのかを考えていくことが大事」と話す。

 行政からサポートも受ける。運営費は会費などで賄っているが、2018年度は、町が支援事業として予算計上した補助金2040万円が上乗せされ、事業の充実化が図れるという。

 一方、15年4月に箱根山の火山活動が活発化して以降、「情報発信が一枚岩でなく、行政や観光協会、事業者ごとにばらばらになっていた」という課題の解消も目指す。

 当時は「通常通り営業」「温泉が出ない」といった各地で異なる状況が混然となって発信され、混乱が生じたという。今後は箱根DMOが観光分野の情報発信で中心的な役割を担っていく、としている。

 箱根DMOによると、火山活動活発化の影響で被った経済損失は、約400億円の見込み。高橋専務理事はリスクに備えるためには「『オール箱根体制』の構築が必要」としてDMO設立の理由を語った上で、「皆の商売につながるよう取り組んでいきたい」と抱負を語った。

 ◆DMO 旅行先(ディスティネーション)をマネジメント・マーケティングする組織(オーガニゼーション)の頭文字を取った法人組織。政府は、各地の経済団体などに設立を促している。観光誘客に関する各種データの収集・分析から、ターゲットとなる顧客層を絞り込み、効果的な地域の魅力発信につなげる役割を期待する。観光庁の登録DMOは、複数の都道府県の「広域連携DMO」、複数地域の「地域連携DMO」、単独市町村の「地域DMO」の3種。県内では宮ケ瀬ダム周辺振興財団、小田原市観光協会などが登録している。

多くの観光客でにぎわう箱根山・大涌谷の園地内=2日、箱根町仙石原

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