晩年の独歩を追う 茅ケ崎で過ごした141日 直筆書簡や写真130点を展示

 茅ケ崎の結核療養所「南湖院」で最晩年を過ごし、今年が没後110年の国木田独歩(1871~1908年)に関する企画展が、茅ケ崎ゆかりの人物館(茅ケ崎市東海岸南6丁目)で開催されている。見舞いに訪れた作家や記者を通じて茅ケ崎の名が全国に発信されたことなどにスポットを当てている。

 企画展のタイトルは「国木田独歩 茅ケ崎ですごした最期の141日」。解説パネルのほか、直筆書簡や写真、編集者として携わった雑誌類など約130点を展示。2部構成で、前半は詩人・作家・記者・編集者として活躍した独歩の足跡を追い、後半は茅ケ崎での日々を、初公開の南湖院の見取り図などとともに紹介している。

 当時の茅ケ崎は、住民運動により1898年に東海道線に停車場が設置され、別荘地・海水浴場として徐々に知られつつあった。20代で小説「武蔵野」を執筆するなど早くから活動した独歩だが文学者として認められたのは遅く、亡くなった1908年はまさに文壇の寵児(ちょうじ)として注目されていた時期。同年1月に喀血(かっけつ)し、2月4日に南湖院に入院してから6月23日に亡くなるまで、見舞いに来た田山花袋ら文化人の多くは近くの旅館「茅ケ崎館」に滞在した。茅ケ崎から発信された独歩の死に関する報道が、結果的に茅ケ崎の知名度を高めることにもつながった。

 同展は9月30日まで(金、土、日曜と祝日のみ開館)。観覧料200円。隣接する市開高健記念館では、自伝小説から開高が半生をどう再構築したかを探る「『耳の物語』を読む」展を開催中(会期・料金は同じ)で、茅ケ崎ゆかりの人物館との共通券は300円。問い合わせは、茅ケ崎ゆかりの人物館電話0467(81)5015。休館日は市文化生涯学習課電話0467(82)1111。

「南湖院」入院後の国木田独歩と当時の茅ケ崎の様子を紹介するコーナー=茅ケ崎ゆかりの人物館

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