ひょっとこ踊りで盛り上げろ 新上五島の住民有志がグループ結成

 新上五島町の住民有志が、宮崎県の伝統芸能「ひょっとこ踊り」でまちおこしを始めた。「五島ひょっとこ連」を結成し、この春から町内のイベントなどに出演。コミカルな舞いを披露し、子どもたちやお年寄りを喜ばせている。呼び掛け人で飲食店経営の吉岡悟司さん(39)は「踊りを通じて人のつながりが広がれば、うれしい」と期待を込める。
 チームが演じているひょっとこは、宮崎県日向市の無形民俗文化財。同市観光協会によると、毎年夏の「日向ひょっとこ夏祭り」で披露され、多くの観光客らでにぎわう。ヒョウ助とオカメという名の夫婦が子宝を願い稲荷神社を参拝し、そのオカメに恋をしたキツネが踊り出した-というストーリー。赤い法被に豆絞りの手ぬぐいを被り、太鼓や鐘の音に合わせて舞う。五穀豊穣(ほうじょう)や商売繁盛を願う踊りとして親しまれているらしい。
 宮崎市出身の吉岡さんは幼少期に地元の夏祭りに向けて練習して以来、知人の結婚式の余興で披露するまで踊ったことはなかった。
 ところが、ふとしたことから、古里の伝統芸能の魅力を再認識することになる。新上五島町出身の宏恵さん(36)と2013年に結婚し、翌年、東京から島に移住。昨年10月に友人たちと町内でキャンプした際、試しに踊ってみたところ、大好評だった。仲間の送別会で披露すると、“人気者”になれた。味をしめた吉岡さんは専用の衣装と振り付けのDVDを購入し、練習を始めた。
 今年2月には友人たちと「五島ひょっとこ連」を立ち上げ、自営業者や町職員ら十数人で本格的に活動を開始した。
 4月29日、五島灘酒造の酒蔵開き。真っ赤な衣装の一団が登場すると観客席から歓声が上がった。軽快なメロディーに合わせた約5分間の演技。会場は手拍子だけでなく、まねをして踊りだす人も。飛び入り参加も出るほど盛り上がった。メンバーの一人で会社員の入江慶輔さん(35)は「派手な衣装が恥ずかしかったけど、自分を開放できて楽しい」と笑顔を見せた。
 吉岡さんは「基本動作を繰り返す踊りだが、演者によって見せ方に違いが出る」と、ひょっとこ踊りの奥深さを解説する。「老若男女が手軽に始めることができる。島の文化の一つとなり、住民の絆を強めるきっかけになれば」と願っている。
 「五島ひょっとこ連」への参加は無料。練習は各自で行う。町内での各種イベント出演も無料で受け付けている。問い合わせは吉岡さん(電0959・42・5577)。

五島灘酒造の酒蔵開きでひょっとこ踊りを披露し、会場は大いに盛り上がった=4月、新上五島町有川郷
五島ひょっとこ連のメンバー。前列右端が吉岡さん

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