遠き親友へ夢届け 鎌倉学園生徒、募金しベトナムに新校舎

 ベトナム中部・クアンナム省の坂の上に今春、小学校の新たな校舎が完成した。その資金を集めたのは、鎌倉学園(鎌倉市山ノ内)の生徒有志。雨期に教室が水浸しになる小学校の惨状を知り、「子どもたちが安心して学べる環境を」と募金活動に奔走した。現地を訪れた生徒に、代表の女児は感謝の言葉を伝えた。「夢にまで見た新しい校舎をありがとう」。

 生徒有志が新校舎建設のために募金活動を始めたのは昨年1月。研修旅行がきっかけだった。

 生徒に広い視野で学んでもらおうと、鎌倉学園は2015年3月から、中学3年から高校2年の希望者を対象に研修旅行を実施。米国、欧州、ベトナムの三つの地域に分かれ、戦争や平和について考えたり、現地の子どもたちと親睦を深めたりしている。

 ベトナムでの最初の研修旅行から帰国した生徒の一部が、「今後もベトナムの役に立ちたい」と募金活動を始めた。当初、明確な使い道はなかったが、クアンナム省のホアンヴァントゥ小学校が深刻な水害に悩まされていることを知った。

 校舎が湖畔に建つ同小は、毎年雨期に突然の豪雨で教室が水浸しになり、児童は教室に常備された小舟に乗って避難していた。高校3年の相川慧斗さん(17)は「研修で出会った子どもたちは明るく元気だったが、大変な思いをしている子もいると知り、何とかしたいと思った」と振り返る。

 昨年1月、新校舎建設を目指す「バンタンプロジェクト」を発足。「親友」を意味するベトナム語を冠した。有志は5カ月後の文化祭で募金箱を抱え、来校者から寄付を募った。模擬店の売り上げのほか、研修に参加していない生徒や教職員、保護者らの協力も得て、約450万円を集めた。

 ことし3月末に現地で開かれた開校式。研修旅行を生かし、鎌倉学園からも生徒63人が参列した。黄色の壁にオレンジ色の屋根が目を引く新たな学びやは、以前より500メートルほど高台に移動した。児童だけでなく、地元住民の避難場所としても活用されるという。

 式後、生徒が企画したリレーや綱引き、玉入れなどで、児童と楽しいひとときを過ごした。「言葉は通じなくても一緒に笑顔になれるんだと実感でき、うれしかった」と1年の杉本遥哉さん(15)。2年の榊原慧さん(16)は続けた。「これからも子どもたちの苦しみを少しでも和らげ、その笑顔を守ることができたら」。

 有志の取り組みは6月16、17の両日行われる文化祭で発表される。

ホアンヴァントゥ小学校からの感謝状を手に、研修旅行を振り返る(右から)相川さん、杉本さん、榊原さん=鎌倉学園

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