親が精神疾患、子の集い場 次回の家族会は26日

 統合失調症など精神疾患のある親の元で育った人の家族会「ひとりやないで!」が、横浜市内で開かれている。若い世代を中心に、親が病気を患っていたために経験したことや、さまざまな悩みなどを語ることで気持ちを分かち合い、病気の親と向き合うための集いの場となっている。

 「ひとりやないで!」は、2013年に代表の加藤枝里さん(26)=川崎市=が立ち上げた。参加者の中心は20~30代で、親の病気に由来する悩みを話したり、情報交換したりする場だ。16年からは、かながわ県民センター(横浜市神奈川区)を中心に原則毎月1回開催している。

 親の精神疾患を「子ども」の立場で受け止めた人の居場所は少ない。奇数月は初めての人も参加できる「家族会」、偶数月はリピーターが食事会などでざっくばらんに話す「懇親会」として活動する。自らの経験がきっかけになり、精神保健福祉士になった加藤さんが専門知識を生かし、利用できる制度や相談場所を紹介することもある。

 加藤さんの母は出産前から統合失調症を患い、現在は県内の病院に入院している。父親から母の病気について伝えられたのは小学校入学前。不安定な母に代わり、子どものころから料理や掃除などの家事を担った。母の行動を心配することも多かったが、「当時も今も母のことは好き」。母のことは特に隠さず、それを理由にいじめなどを経験することもなかった。

 だが、就職活動で思わぬ体験をした。福祉にも関わりのある企業の面接で母の病気のことを伝えると、不採用になった。「障害のことが理解されていない」という悔しさとともに、ずっと考えていた家族会を立ち上げようと決めた。「母の病院に行っても、自分と同世代の人に会ったことがない。でも、精神疾患の当事者に全く子どもがいないはずがない」。病気に対する偏見などから話さないだけで、同じように親が疾患のある人が必ずいると考え、大学在学中の13年11月に活動を始めた。

 集まりで話される内容はさまざまだ。つらい体験や親の行動への腹立たしさに共感が集まる一方で、病気だからこその奇想天外な発言に笑いが起きることもある。「私のことをまず話して、雰囲気づくりを意識している」と加藤さん。「ここは明るい話も多く、前向きな気持ちで帰れる」と話す参加者もいる。語り合ううちに、懸命に親の世話をする人が自分自身の生活も大事にしていいと気付いたり、親も苦しんでいたことが分かり、病気の親を受け入れられるようになったりすることもあるという。

 気持ちを分かち合える場としての役割を果たしているが、加藤さんの目標は「最終的に会がなくなること」だ。「何十年もかかるかもしれないが、こういう場がなくても集まれる関係が築ける世の中になればいい」と話す。

 次回の家族会は26日、かながわ県民センターで開催。初めて参加する場合は千円、2回目以降は500円。詳細は、同会のホームページ(https://hitoriyanaide2525.amebaownd.com/)。

加藤枝里さん

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