多摩川の渡し舟に興味津々 高津、世田谷区の児童ら交流

 戦後間もなくまで多摩川を往来する庶民の足だった渡し舟「宇奈根の渡し」を1日限りで復活させ、船着き場があった川崎市高津区、東京都世田谷区の市民が交流するイベントが13日開かれた。両岸の小学生らが乗船し、川幅約50メートルという近さを実感。「あっという間に着けるよ」と歓声を響かせた。

 1950年に廃止された宇奈根の渡しの復活は2014年から毎年企画されているもので、世田谷区の児童館に通う子どもたちが「渡しって何?」と疑問を持ったのが始まり。地元の古老の手で舟を復元し、2年目からは両自治体の連携協力包括協定の締結記念も兼ねて交流を続けてきた。

 船頭を務めたのは世田谷区立喜多見小6年の女子(11)。この日のために練習を重ねてきたといい、「川崎側に友達がいないから、会うのが楽しみだった」と張り切った。

 長ざお1本で舟を巧みに操るその姿に「格好よかった」と目を見張ったのは川崎市立高津小学校4年の男子(9)。野球の練習で通う世田谷区側の河川敷までは電車とバスを乗り継ぐ必要がある。「舟ならあっという間。思った以上に近かった」。同小2年の男子(8)も「水がきれい。川底に石が見えた」と新たな発見を喜んでいた。

 職員派遣や共催イベントなどを重ねてきた包括協定も締結から5年の節目。きっかけは、福田紀彦市長と保坂展人区長が、復活した渡しに同乗した際の会話だったという。

 あいさつに立った福田市長は「市民は古くから対岸で協力し合ってきた。多摩川で隔てられたまちではなく、多摩川でつながるまちであり続けたい」と話し、子どもたちの思いが取り持った自治体の垣根を越えた協力の発展を約束した。

多摩川で宇奈根の渡しを体験する子どもたち =東京都世田谷区

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