登録へ準備着々 ツアー企画、外国人対応、土産品開発…

 世界文化遺産への登録勧告を受けた「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本の12資産)。6月下旬から7月初旬に登録が正式に決まる見通しだ。観光業界や構成資産がある地元では、ツアー企画や土産物品開発などの準備が着々と進んでいる。

■助成も追い風

 JR長崎駅かもめ広場の「世界遺産案内所」。スタッフによると、祝福の声を掛けてくる市民も。これまでは3年前に世界文化遺産になった端島(軍艦島)について尋ねる人が多かったが、勧告後は大浦天主堂や外海の集落など潜伏キリシタン遺産に対する質問が増えた。
 長崎市は11日、市役所に「世界遺産へ前進!」と記した看板を設置した。担当者は「市民にアピールし、登録までしっかり盛り上げたい」と意気込む。
 旅行業界も熱い視線を送る。昨年から始まった滞在型離島ツアーに対する国境離島新法関連の助成制度も追い風に。県によると、助成対象のツアーを企画する会社は昨年の20社から今年は倍増する見通しだ。

■問い合わせ増

 五島行きツアーを展開する九州商船には勧告前後から関東、関西の旅行会社を中心に問い合わせが急増した。秋ごろまで現地の観光バスの確保が難しくなりつつあるという。
 JTB九州長崎支店は「長崎に行きたいと思わせる動機づけとして魅力的」と評価する一方、「教会は生活の場であり、一般的な観光地とは違う。ツアーを企画するにも地域の人とのコミュニケーションが不可欠になる」と指摘する。
 長崎市内で三つのホテルを運営する九州教具は外国人観光客の増加をにらみ、英語や韓国語などを話せる外国人従業員を15人程度採用。フロントにはタブレット端末を使った8カ国語対応翻訳システムも導入した。構成資産への質問に答えられるようにスタッフの勉強会も検討中だ。

■地元の味PR

 地元の味のPRや土産品開発も各地で進む。「平戸の聖地と集落」(平戸市)に含まれる春日集落の案内所では、「春日の棚田米」や、地元の主婦が手作りした漬物販売を計画。平戸観光協会は、棚田米が原料の日本酒を案内所で販売するために免許を申請している。新上五島町は、「頭ケ島の集落」をモチーフにした記念切手や写真集の製作を予定している。
 焼き菓子「クルス」を長年製造する小浜食糧(雲仙市)は昨秋から、構成資産のある長崎市の外海地区で収穫したかんきつ類ユウコウを使った「外海ゆうこうクルス」を売り出した。「登録は間違いなく追い風。ストーリー性も伝えていきたい」。各店舗では今後、登録勧告を祝うディスプレーにし、登録機運の盛り上げにも一役買う。

タブレット端末を使った翻訳システムで対応するスタッフ(左)=長崎市大黒町、ホテルクオーレ長崎駅前
世界遺産登録へ前進したことをPRする看板=長崎市役所

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