フェラーリ失速の遠因となった初日のPUトラブル【今宮純のF1スペイン決勝分析】

 2018年F1第5戦スペインGP決勝はルイス・ハミルトンが優勝、バルテリ・ボッタスが2位となりメルセデスが制圧した。フェラーリのセバスチャン・ベッテルはタイヤがもたず2ストップ戦略で表彰台から脱落することに。F1ジャーナリストの今宮純氏がスペインGPを振り返り、その深層に迫る──。 

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 全開率が驚異的に高まり大幅にタイムアップした第5戦『新スペインGP』を見たような気がする。今季最も激しいアクシデントで始まったが、ぐいぐいリードを広げてポールトゥウィンのルイス・ハミルトン。

 今年、土曜FP3でフェラーリはすべてトップを握りしめ、ベッテルが直近3戦の予選PPにつなげてきた。そのパターンを遂にハミルトン&ボッタス1-2で崩し、メルセデスが今季初めてフロントロウを独占。まさに形勢逆転である。

 PPハミルトン1分16秒173は『ハイパー・ラップ』。セクター3にシケインが無かった最後の06年、PPフェルナンド・アロンソは1分14秒648で約1.5秒しか違わない。

 人気沸騰のMotoGP開催があり(要請によって)1月に全面新舗装され、バンプが無くなり、スムーズ路面に変わり、まったく似て非なる新コースになったカタロニアである。

 あのロマン・グロージャン事故に関して。スチュワードは『次戦3グリッド降格とペナルティ2点(現在5点)』を科した。いわば“高速渋滞中”の1~2コーナーのど真ん中を、左から右へ横切ろうとしたその行為が罰せられた。

 ニコ・ヒュルケンベルグとピエール・ガスリーの2台しか、衝突しなかったのは奇跡に近い。アロンソが左アウト側に瞬間回避していなければ、数台以上の多重事故に陥りハロがあっても、どうなっていたことか。

 直前でケビン・マグヌッセンが乱れ、とっさに反応したグロージャンがスピン状態になったところまでは“レーシング・アクシデント”。

 しかし、直後のあのプレーは自分も被害を受けるリスクがあった。全員うまく避けてくれると彼は思ったのだろうか……。

 レースに戻ろう。風も弱まり、雨雲も近寄らず、路面温度30度前後のコンディションは先頭を行くハミルトンにとって快適空間そのもの。パルクフェルメでの左後輪タイヤ交換を認められ、25周目にソフトから予定通りミディアムへ。

 1ストップ・レースなど8年間ここではありえなかった。それくらい今年のスペインGPはなにもかもが目新しかった。最後に加えると、ダニエル・リカルドの最速ラップ1分18秒441は昨年PPを超えて実に5.152秒も更新。凄まじい“超速化”を表す――。

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