高齢者のペット問題で意見交換 「立場超え情報共有を」

 高齢者のペットを巡り、福祉や介護、動物愛護の関係者が意見交換する集いが12日、川崎市高津区の高津市民館で開かれた。現場から、ペットの世話を十分にできずに不衛生な状況になっていたり、入院などでペットが取り残されたりする事例が報告された。立場を超えて関係者が情報共有する必要性などを確認した。

 かわさき高齢者とペットの問題研究会(渡辺昭代代表)が主催した。

 宮前区地域みまもり支援センターの松浦和子担当部長は自助、共助の視点から講演。「ペットを飼っている1人暮らしの高齢者は、万が一のときに誰に連絡し、世話をしてもらうのか決めておいてほしい。また、地域の人に家にペットがいることを知ってもらい、地域に知り合いをつくることも大事。ペットの存在は人とのつながりをつくりやすい」などと述べた。

 かしまだ地域包括支援センター(幸区)の深井純子センター長は、ケアマネジャーの8割超が「困った経験がある」と回答したアンケートを先ごろまとめた。介護職が排せつ物の悪臭に悩まされたり、犬にかみつかれたりした事例などを紹介しつつ、「高齢者にとってペットは自分から何かをしてあげられる存在で、生きる力にもなっている」と、人と動物の福祉を考える必要性を語った。

 川崎市動物愛護センターの須崎聰所長も、運動不足の解消や世話をすることによる認知症予防、社会からの孤立回避など、高齢者がペットを飼うメリットを指摘。一方で、飼い主の体力低下で散歩に連れて行けなかったり、経済状況から病気の治療も行われなかったりなど、ペットの立場から見たリスクにも言及した。

 須崎所長は、家賃未払いで施設に移ることになった70代の女性が13匹の猫を飼っていたケースも報告。この女性は、夫と死別後に猫を飼ったが、不妊去勢手術をせずにどんどん繁殖してしまったという。親戚、友人もなく、13匹は愛護センターが引き取った。すべての猫に新しい飼い主が見つかったというが、須崎所長は「社会的に孤立しないことが重要。問題が大きくなる前に関係者で情報共有していく必要がある」と訴えた。

介護や動物愛護の現場から、関係者がさまざまに意見を交換した集い =高津市民館

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