角松敏生がJAZZの流れを汲んで自身の楽曲やスタンダードを新たにカバーしたアルバム。本作の制作経緯や各楽曲への熱い想いは、3万字前後に及ぶセルフライナーノーツを読んでいただくとして、ここでは一般のJ-POP向けの楽しみ方をご紹介したい。
1曲目の『Lady Ocean』から、管楽器によるスウィングの中、角松らしい華やかなメロディーが展開するのが、まさに絶妙。以降、『SHIBUYA』や『RAIN MAN』など大人が行き交う都会の夜が想起されてウットリ。さらに、8曲目『AIRPORT LADY』からハイテンションになり、12曲目『Morning After Lady』で静かに幕を閉じるような編曲は、まるでコンサートを観るようだ。
歌唱も演奏も重厚この上なく、きっと相当の努力と鍛錬による賜物だと気づかされ、思わず背筋が伸びる。角松の声は、相変わらず色気がありつつ深みも増し、本田雅人や山本拓夫など大御所だらけの演奏も互いにスパークするようで気迫に満ちている。なお、かつて角松がプロデュースしていた吉沢梨絵がパワフルな歌声で参加しているのも個人的には感慨深い。
本作を聴けば、何歳になってもお洒落でいたいと思うと共に、水面下でのたゆまぬ努力も必要だと痛感するはず。
(ソニー・3000円+税)=臼井孝