【JFEの業績動向】〈JFEホールディングス・岡田伸一副社長〉JFEスチール、今期はコスト上昇で減益見込み 新中期計画のJFEスチール経常益目標「期間平均で年2200億円」

――前3月期の連結経常利益は前の期比で2・5倍の2163億円に改善しました。

 「JFEスチールのスプレッド改善とコスト削減が大きく寄与し、業績が大幅に改善した。JFEスチールの単独経常損益は2015年度、16年度と2期連続経常赤字だったため、17年度は黒字化が必達目標だった。不退転の決意で取り組んで経常黒字化を実現した」

――課題も残る年でした。

 「JFEスチールの単独粗鋼生産量は2846万トンと、移管した旧JFE条鋼仙台製造所分(約60万トン)を除けば実質減産だった。設備トラブルによる操業不調が響いた。キャパシティーからすれば、2900万トン程度は生産しなければいけない。安定生産が最大の課題だ」

JFEホールディングス・岡田副社長

――続く今18年度は粗鋼2900万トンに増産見通しですが、増益・減益要因が混在し、JFEスチールの連結経常利益予想は減益(1988億円→1600億円)です。

 「金属等の副原料や資材費などのコストアップが500億円、製造基盤整備推進費用としての減価償却費増や廃却費増加が300億円、この二つで800億円の減益要因となる。増産やコスト削減といった増益要因はあり、スプレッドも改善を見込んでいるが、差し引きで現時点では減益を見込んでいる」

――鉄鋼事業のグループ会社の17年度の業績について。まずは国内から。

 「ほぼ全社が黒字となった。16年度比で増益となったグループ会社がある一方で減益となった会社もあったが、総じてみれば高水準の利益レベルとなっている。唯一悪いのは電炉分野で、JFE条鋼は特に下期のスプレッドが大幅に悪化した」

――海外事業会社は。

 「トータルで16年度比100億円程度の利益拡大となった。15%出資する印JSWスチール、米国CSI社、中国の宝武集団との合弁であるGJSS社などが堅調だ。タイのJSGT社は16年下期から黒字が続いている。インドネシアのJSGI社は立ち上げ途上のため、まだ赤字となっているが、主要会社は総じて堅調だ」

――このほど公表した新中期計画では、JFEHDの目標経常利益を2800億円(期間平均)とし、そのうちJFEスチールを2200億円としました。従来、JFEスチールはROS10%を目標としていましたが、なぜ絶対値に?

 「前中期の収益目標は、JFEスチールがROS10%、JFE商事とJFEエンジニアリングがそれぞれ300億円としていた。グループで統一感を持った指標の方が分かりやすいことなどから、全社の収益目標を絶対値とした」

――最終年度の達成ではなく、平均とした意味は?

 「鉄鋼業は景気変動の影響を受けやすい業態であるが、持続的成長が可能な収益水準を上げ続けることが重要と考え、中期3年間で達成すべき目標を掲げた。もちろんコスト削減のように3年間の積み上げとして収益改善幅が増えていく要素はあるため、最終年度の到達点はより高い水準となる」

――ROE10%(17年度実績7・6%)の目標は引き続き掲げています。

 「株主に対して、株主資本コストを上回る利益を上げていくことが必要で、現時点ではROE10%以上がそれに当たると考えている」

――財務体質は、DEレシオではなく、EBITDAに対する負債倍率を3倍(17年度は3・4倍)にする目標です。

 「固定資産が大きい当社のような業態においてDEレシオは重要な指標だが、50%台を維持できている。むしろキャッシュフロー収益に目を向けてコミットしていくべきだろうし、そのレベルをクリアできれば国際格付け機関からのA格が視野に入る」

 「そのためにはフローの利益を増やすことだ。従来よりもキャッシュを意識して、在庫マネジメントなども行っていく。新中期では設備投資が増えるため、負債の絶対額は横ばいか若干増える可能性がある。フロー収益の拡大が一段と重要だ」

――最後に鉄鋼事業以外について。まずはJFEエンジニアリングから。

 「17年度は対前年度比で収益が低下したが、これは16年度の受注低迷を映したもの。加えて海外プロジェクトを中心に一過性の追加コストもあったが、今は収益立て直し途上にある。17年度の受注高は挽回しており、18年度は元の収益レベルに戻ると期待している」

――JFE商事は。

 「経常利益330億円と、グループ内で唯一、前中期の収益目標を達成した。コイルセンター群やケリーパイプ社などグループ会社の収益改善に加え、鋼材価格の上昇が寄与した」

――大きな損失を計上した造船事業のジャパン・マリンユナイテッド(略称・JMU、持分ち法適用会社)について。

 「新しい船種にも挑戦してきたが、初受注・初生産を進める大型LNG船で大幅な工事遅延コストが発生したことは大変残念だ。JMUには18年度の黒字化を目指し、収益改善策を迅速に進めてもらいたい。中長期的かつ継続的に収益を確保できる競争力のある造船会社になってもらうことを、株主として期待している」(一柳 朋紀)

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