金属行人(5月16日付)

 鉄鋼メーカーを取引先に持つ資材メーカーの営業担当者は昨年来、ユーザーへの製品配送で頭を悩ますことが多くなった。納期が間近になっても、配送用トラックの手配がつかないケースが頻発しているからだ▼「いくらでも出すから何とかお願いします」。古くから付き合いのある運送業者の返事はそっけない。「お金の問題じゃないんです。ドライバーがいないんです」。人手不足がクローズアップされているが、運送の現場はとりわけ深刻だ。そもそもドライバーを志望する若者が減っているのだ。重量物輸送ではその傾向が特に顕著という▼トラック運転手の労働時間に関する規制も背景にある。運送業者は安全運行のため、運転手の拘束時間を厳密に管理し、十分な休息時間を確保しなくてはいけない。その分、余裕を持たせた要員確保が必要で、これが人手不足に拍車を掛けている▼鋼材輸送も例外ではない。昨年来、陸送を中心に運送料金が跳ね上がっている一因が人手不足。鋼材輸送は専用の車両を使うことが多いだけに、それを操るノウハウを持つドライバーの確保はとりわけ難しいのが実情だ▼鉄鋼業界では副原料や資機材の値上がりによるコスト増が続く。人手不足を背景とした運送費の上昇をどう吸収するかも大きな課題だ。

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