犯罪死 見逃さない 変死の薬毒物検査を強化 長崎大と県警が連携

 長崎大医学部と長崎県警は4月から、県内で発生する変死事案について薬毒物の検査態勢を強化した。事件性が疑われる事案はこれまでも検査していたが、加えて検査可能な事案はほとんどすべて実施する。睡眠薬などを使った事件が全国で相次ぐ中、犯罪死の見逃しを防ぐのが狙い。大学と県警によるこうした連携は全国でも珍しいという。

 ■増加

 長崎大によると、県内の変死事案は1996年度は912件だったが、高齢化や核家族化の影響で次第に増え、2010年度以降は1500~1800件台で推移している。17年度は1587件だった。
 県内で変死事案が起きた場合、県警の「検視官」(6人)がほぼすべての遺体の状況を確認。現場に急行できない離島では、地元署に配備された専用端末から送られてくる映像をリアルタイムで見るなどして事件性の有無を判断している。県警捜査一課の後藤公士朗検視官室長は「システムを改良しながら死因究明に努めたい」と話す。
 しかし、警察や法医学関係者を悩ませているのが、全国で多発している薬毒物を使った犯罪だ。

 ■連携

 首都圏の連続不審死事件(10年)では、木嶋香苗死刑囚(43)が交際相手の男性3人に睡眠薬を飲ませ、練炭による一酸化炭素中毒で殺害。佐賀・長崎連続保険金殺人事件(99年)や大村保険金殺人事件(07年)、諫早市の連続昏睡(こんすい)強盗・強盗致死事件(17年)でも睡眠薬が使われた。
 捜査現場では近年、簡易型の薬毒物検出キットが使用されているが、検出できる薬毒物は8種類で限界がある。関係者は「警察が見抜けていない薬毒物を使った犯罪があるのかもしれない」と明かす。
 そうした危機感から、長崎大と県警は3月、死因究明や身元確認などで連携する協定を締結。薬毒物検査の強化にも取り組むことにした。両者は以前から死因究明で先駆的な取り組みを続けていて、県警の警察官が大学協力研究員として、同大のCTを使っていつでも遺体のAi(死亡時画像診断)ができる態勢なども整えている。

 ■判別

 県内の変死事案のうち、薬毒物検査の実施率は10年度は4・9%。年々高まってきてはいるが、検査可能な変死事案ほとんどすべてに対象を広げる。県警が採取した血液などを、長崎大医学部法医学教室にある200種類以上の薬毒物を判別できる最新機器で検査。不審な点があれば、県警が捜査に生かす。
 同教室の池松和哉教授は「採取された血液は大学で20~30年は保存し、疑わしい事案はいつでも検証できるようにする。県警と強力に連携し、犯罪死の見逃しを防ぎたい」と話す。

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