【関西地区雑品スクラップ動向】大阪湾岸船積み量、大幅減 中国輸入制限で不法投棄の懸念も

 大阪湾岸からの雑品類の輸出量が減少している。関西鉄源協議会(会長・黒川友二扶和メタル会長)調べによると、今年1~4月期の大阪湾岸船積み数量は4万1709トン。前年同期比44・8%減の大幅減となった。大阪湾岸での昨年実績は21万3106トンであり、今年はこのペースならほぼ半減の10万トン前後になる。

 最大の買い手であった中国が今年から雑品類の輸入を制限したのが主な要因だが、来年には輸入が禁止され、さらに影響が拡大する見込み。

 雑品スクラップの扱いをめぐっては、市中鉄スクラップの集荷・加工拠点となる鉄リサイクル業者は発生先向けへのパンフレット作成など、自社製品となる鉄スクラップへの混入を防ぐ取り組みを続ける一方、「これはビジネスチャンスになる」とし、業容拡大の好機と考える向きもある。

雑品混入の可能性も

 「『従来の取引先が引き取ってくれなくなった。何とかしてほしい』と、引っ越し業者や中小家電量販店からの問い合わせが増えてきている」(鉄リサイクル業者)。

 雑品は、具体的には業務用エアコン・配電盤・モーターなどを指す。どこにでも発生するものであり、おおむね6~7割が鉄など金属類に再資源化され、それ以外はダストとなる。一般的に日本では雑品スクラップの処理費用は人件費などのコストがかかりすぎるため、採算が合わないとされる。

 近年は資源需要が旺盛な中国向けに輸出されていたが、中国という向け先がなくなったことで、雑品は行き場を失いつつある。

 一部は電炉メーカーに供給される鉄スクラップに混入しているとみられ、溶鋼中の銅(カッパー)値がやや上昇しているという。メーカーは検収体制を強化することで、雑品の流入を防いでいる。

 また、Aプレス(廃車ガラをプレスしたもの)内に流入するケースもあるようだ。シュレッダー業者は「見た目には分からない。中身を開けて確認するほかない」とし、自衛手段として「どこから買ったかを分かるように、置き場を整理したり、印を付けたりしている」現状にある。

ダスト処理費高騰がネック

 雑品を国内で処理する設備のひとつとなるのが、シュレッダー。国内の設備稼働率は低水準に止まっているため、年間150~200万トン程度は発生するだろう雑品類を、処理する余力は十分にある。

 ただ、シュッレーダスト(SR)の処理費用が課題で、ダスト処理設備の減少、埋め立て処理する管理型最終処分場の余地も少なくなっていることなどに伴い、その費用が高騰している。

 シュレッダーで加工処理される主な原料はAプレス。そこで発生するダスト(ASR)は自動車リサイクル法により「処理した台数に応じて処理量が決まる」(シュレッダー業者)ものの、ダスト処理設備の減少に伴い、遠隔地での処理を余儀なくされている。この輸送費はシュレッダー業者側の負担となっており、採算悪化の一因となっている。一部シュレッダー業者は「ASRの処理だけで手いっぱい。SRを処理できる余地がほとんどない」と話す。

逆有償の恐れ、不法投棄にも

 中国の輸入制限以降、雑品類の価格は下落しているが、業界関係者は「どうあれ売値はある。まだ売れないことはない。ただ、年末になると、値段が付かなくなるのでは」とし、「逆有償化が進むだろう」と予測する。

 逆有償となった場合、懸念される問題は不法投棄。足元も引き取り先が減り始めているが、中国の輸入制限だけではなく、国内ではダスト処理費用の高騰という要因も重なっている。業界係者は「不法投棄問題が出てくるのではないか」と、先行きを不安視する声が目立っている。

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