【JFE条鋼の経営戦略】〈渡邉誠社長〉第6次中計、各製造所の強み発揮に重点 設備強靭化へ3年間で155億円投資

姫路と鹿島で形鋼の品質安定化

――2016年4月に社長に就任し、2年経過した。

 「就任時、仕事は3年を区切りに進めると決意した。1年目の16年度は会社の仕組み変更に取り組んだ。〝環境・防災・安全〟に関する全社の仕組みや、スキル・エキスパート(SE)制度の導入で人材育成の仕組みをつくった。17年4月になったが海外事業部、商品開発部も設けた」

 「2年目の17年度は仕組みを生かすことと、全社のモチベーション向上、品質・コストで電炉トップを目指す取り組みを進めた。17年度は第5次中期経営計画の最終年度だった。今期は社長として3年目だが、5製造所として生まれ変わった『REBORN条鋼』を提唱してから2年目。今期につぼみを膨らませ、来期に『REBORN条鋼』としての花を咲かせたい」

JFE条鋼・渡邉社長

――第6次中期経営計画の内容は。

 「20年度に経常利益80億円、ROS8%が目標だ。売上高は1千億円となる。10年後の理想としてはROS10%を安定的に確保したい。高収益商品の拡販を進め、具体的には東部製造所の独自商品で曲げ性能の高い細物鉄筋『フレックスバー』や、高品質・高精度形鋼の販売に力を入れる。海外事業に関しては時間軸を早めて可能性を探るが、可能性なしとの判断を含め将来的にぶれない決断をしたい。さまざまな取り組みがあるが、重要なのは人づくり。モチベーションやスキルを上げ、人材の力を高めていく」

 「また、第6次中計では各製造所の強みを発揮することが最大の目標だ。ここ2年間の異動を通じ、各製造所に最も適した所長を配置した。各所長が自らの権限で、その製造所の強みや特徴を生かした戦略を実行する。当社の製品は鉄筋棒鋼と形鋼に分かれる。形鋼では生産拠点の最適化による収益最大化を図るため、姫路と鹿島で品質安定化につながる戦略的な設備投資を行う。鉄筋棒鋼では市場が縮小する中でどう生き残るかが課題。鉄筋事業で安定した黒字を確保するため、関東では4月から納期設定した受注を開始した。また、東部の『フレックスバー』は販売量を1・5倍に伸ばしたい」

――それぞれの製造所の強みと特長をどう捉える。

 「豊平は季節的な生産変動に対応した柔軟性がポイントだ。鹿島は小形形鋼、東部は『フレックスバー』に代表される高品質の細物鉄筋が強みだ。姫路は多品種の生産が強みであり、水島は品質の高さと立地に優位性がある。一部で当社の製造所の閉鎖や集約のうわさが出たようだが、全くの事実無根。各製造所の特徴を生かし、それぞれの強みを発揮していく」

――設備投資計画は。

 「第5次中計の設備投資は3年間で152億円だった。第6次も3年間で155億円を計画する。うち、老朽更新の投資は第5次の67億円から第6次は82億円に増額。設備の強靭化を図るため、機能アップを含めた老朽更新の投資を厚くする。一方、防災・安全対策は第5次に24億円と厚くした分、第6次は13億円と巡行速度に戻す」

 「17年度後半には幾つか設備トラブルがあった。各製造所の安定操業と製品出荷までのボトルネック工程解消も課題だ。3年間の老朽更新投資は18年度に61億円、19年度に57億円、20年度に37億円とトップヘビーで計画している」

――長期的な戦略は。

 「10年後のビジョンとして『REBORN条鋼 生まれ変わりから理想に向かって』というスローガンを設けた。リボーンの頭文字を基に『Road to the ideal Enterprise and Blue Ocean Range with Never die spirits』という標語も設けた。水島と鹿島の東西2拠点で行っている資源リサイクル事業といった新市場(ブルー・オーシャン)で企業としてのプレゼンスを発揮しつつ、鉄筋や形鋼という既存市場(レッド・オーシャン)での勝ち抜きを前提とする。また、製造メーカーとしての使命である顧客に愛される商品開発にも力を入れていく」

 「当社の従業員に会社に対する愛着度をアンケートしたが、現状は愛着を持っている人が40%程度だった。働き方改革を進め、6次中計で愛着度を80%に引き上げ、10年後には100%となることを目指す」(小堀 智矢)

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