全固体電池向けシリコン負極、物材研が安定動作を実現

 物質・材料研究機構(NIMS)は、全固体リチウム電池向けシリコン負極の高安定動作に成功したと発表した。結晶シリコンより体積変化に強いアモルファス(非晶質)・シリコンを母材とし、そこにナノ多孔構造を導入することで実現した。シリコン負極は現行の黒鉛負極に比べ重量容量密度で約11倍、体積容量密度で約3倍と高容量化が図れるため、電気自動車の航続距離の大幅な延伸や再生可能エネルギー発電施設用蓄電池システムや家庭用蓄電池の大幅な性能向上につながる技術として期待されている。

 シリコンは充放電時のリチウムの出入りに伴って体積が大きく変化することから充放電の繰り返しによって壊れやすく、容量が低下してしまうという課題があった。さらに液体の電解質は充電の度にシリコン表面で分解されてしまうため、容量低下の問題がさらに顕著になる。

 これに対し、今回開発したアモルファス・シリコン負極膜は、液体の電解質に替えてシリコン表面で分解の起らない固体電解質と組み合わせることで100回充放電を繰り返しても容量低下がほとんど起こらないことが確認された。

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