これが仮設住宅?!普通に住みたくなるレベル!(前編) おしゃれなイタリアの仮設住宅と災害関連死のない避難所

こ、これが仮設住宅!??今回ご紹介している写真はすべて、認定NPO法人「まち・コミュニケーション」代表理事/神戸学院大学非常勤講師(災害復興研究)の宮定章氏からいただきました。ありがとうございます!

本日の記事は、防災に全く興味がない人に見ていただきたいのです。だって、この写真見てください!!これ!これ!どこのモデルルーム?って思いませんか?

たっぷり収納しやすそうな台所。うちのより素敵なのでは?と思ってしまいます!

でも、これ仮設住宅なのです。場所は、イタリア。イタリアで起こった地震とその後の動きについては次週紹介することにして、まずは、ひき続き洗練された仮設住宅をお楽しみください。

台所を別の角度で見て見ましょう。

 

ズッキーニと調理台を比較すると大きさがわかりやすいかもしれません。奥行きもしっかりありますよね。そして、右奥にちらっと見える家具も見てください。右奥に焦点をあてるとこちら。

 

家具は作り付けです。そして、統一感もあります。最初からしっかり収納できる場所があると、片付けのあせりも軽減するし、統一感のある部屋は、すっきりみえるので、落ち着きそうって思ってしまいます。右奥にみえるソファもあらかじめそなえつけられていて、家賃は無料です。

仮設住宅は最初から10年使える仕様!日本では・・

 

こちらは仮設住宅の外観です。家の間には必ず、ベンチがあって交流できるスペースが確保されています。

 

こどもの遊び場もあります。こどもの遊び場が重要であることはこちらでも書きました。

■避難所に子どもたちの遊び場を作ろう!悲しい理由が希望に変わる!
おもちゃがなくても大丈夫。子どもたちは遊びの天才なのです♪
http://www.risktaisaku.com/articles/-/5699

仮設住宅には、すでに7年住んでいる方もいらっしゃるそうで、玄関前の土のスペースが畑になっているところもあります。

 

ところで、さらっと書きましたが、気づかれましたか?「7年住んでいる方もいる」という点に。

日本では災害救助法と建築基準法により、応急仮設住宅は2年で原則撤去するという2年しばりがあるのです。ですので、本来長期の耐久性はない建物に対し、状況に応じて延長したほうがいいのでは?という議論が起こって来る訳なのです。でも、イタリアは最初から仮設なのに長期で暮らせる仕様にしています。なぜなのでしょう。

その疑問もちょっと置いておくことにして、さらに引き続きおしゃれな、今度は、仮設商店街を見てください! 

 

本当に仮設?って思いませんか?リゾート地にあるショッピングモールにしか見えないです。なのに、日本でいうところの「仮設商店街」なのだそうです。イタリアの仮設の概念って一体?

設計の一部は建築家の巨匠レンゾ・ピアノ!

奥にある建物をズームアップした写真がこちらです。

 

レストランです。美しい建築物ですよね。それもそのはず、この地域の施設の設計の一部には、日本では関西国際空港旅客ターミナルや銀座メゾン・エルメスを手がけた世界的建築家、レンゾ・ピアノ氏が関わられているのです。

世界的に有名な建築家による仮設商店街、さてその資金はどうやって?という疑問もやっぱりちょっと置いてもらって、なお引き続き写真を見てみましょう。

 

こちらの物件をご覧くださいませ!(不動産業者のようになってますが 笑)

日本の賃貸住宅でもありそうな感じですよね。災害公営物件でしょうか?違うんです。こちらも木造の仮設住宅なのです。

 

何度も書きますが、家具は備え付け。

 

 
広々としたキッチン。テーブルや椅子も備え付け。食洗機もあります。どんどんいきます。

災害公営物件も美しい!何度も言いますが家具も備え付け!

 

 こちらは災害公営物件。

 

免震構造になっています。

 

キッチンと広々とした冷蔵庫。冷蔵庫を閉じるとキッチンと統一感のある仕様です。

 

 キッチンの横にリビングがあります。

 

 リビングをアップ。思わずくつろいじゃいますね。わかります!

 

仮設住宅もそうですが、ベットルームはキッチンやリビングとは別に設置されるのが普通です。

 

 バストイレはこちら。湯船に浸かりたい日本では、お風呂はトイレと一緒じゃないないほうがいいと思う方も多そうですが、シャワーだけですごす欧米のお風呂としては十分な広さなのでしょうね。

いかがでしょう?どれも普通に住みたいレベル。ため息がでちゃいますね。

災害関連死のない避難所を目指して

今回ご紹介している写真は認定NPO法人「まち・コミュニケーション」代表理事/神戸学院大学非常勤講師(災害復興研究)の宮定章氏からいただきました。

工学博士でもある氏は、博士課程在学時の指導教官(大学教授)から、『イタリアの避難所・仮設住宅はすごいらしい』と言われ、医師、弁護士、建築士の方々と一緒に調査に入られました。写真を見せていただいて、本当に、すごい!の一言です。

仮設住宅と災害公営住宅を順に紹介しましたが、どちらも本格的住宅にみえて違いがわかりにくいと思います。イタリアでは、地震ごとに柔軟な対策がとられていて、日本のように撤去が早い仮設住宅もありますが、10年近くもつことを前提に作られ、断熱性能もそなえた仮設住宅も建設されています。

これについては、こちらの論文に詳しく書かれています。

■イタリアにおける震災復興プロセスに関する研究-2009年ラクイラ地震における緊急時対応及び応急建設に着目して-
(公益社団法人日本都市計画学会都市計画論文集 Vol.30 No.3 2015年10月)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/50/3/50387/pdf

また、最初に紹介した7年住まれている仮設住宅について宮定氏はこんなことをおっしゃっています。

「イケアの家具がついているそうで、室内が、綺麗に整頓されています。日本の仮設住宅もよく寄らせて頂きますが、収納がないからか、もので溢れているお宅が多い(もちろん、居住者によりますが)。お母さんと娘さんの2人暮らしで、ベットルームが2つとリビングとシャワー室があります。 土地柄、寒さ対策ができており、7年は居住できる環境になっています。実際、ラクイラ地震(2009年)の被災地では10年を経ますが、まだ住宅再建中の場所がありました。仮設住宅の居住環境は重要だと認識されているようです」。

なぜ10年もつ仮設住宅が作られる事があるかというと、歴史的建造物の多いイタリアでは建物の再建や調査に10年近くかかることがあり、その場にすぐに住むことができないケースもあるからです。

そのため、街の復興を10年待っても満足できる仮設住宅が建築されています。これについて詳しくは、この調査に同行された朝日新聞記者の方の記事をご覧ください。

■連載:特派員リポート(@アマトリーチェ)「避難先で死なない」イタリア被災地に学ぶ生活再建(2018年5月1日付 朝日新聞Digital) 
https://www.asahi.com/articles/ASL4R1PRZL4RUHBI003.html

さらに著名な建築家の方が仮設商店街の建築に参加されるなど、資金面はどうなっているの?ということについてですが、宗教的理由もあり、ふだんから困っている人を助け合う、寄付をするという文化があるからなのだそうです。

宮定氏の2018 年4 月イタリア中部地震災害復興調査視察報告(in 仙台弁護士会 災害復興支援特別委員会)によると、以下のように書かれています。

「イタリアは、突然災害が起きる国である。75%の市町村が、洪水と土砂災害のリスクが高い。10%の地域は、津波のリスクがある。活火山は2つ。休火山は9カ所です。海底火山が多い。自然災害が多いと言うことで、日本に似ています。しかし、大部分の市町村は規模が小さい。そこで、官民で、助けあって災害救援を行っています。

災害史から、市民安全省の設立の経緯と、国や各自治体との位置づけ。そして、公的支援、学術支援、社会的支援(ボランティアや地域)を位置づけています」

熊本地震では、直接の死者は50名に対し、災害関連死は、200名以上になっており、多くの方が避難生活により命を落とされている現状があります。災害関連死は人的災害と言われます。災害関連死をなくすために何をしたらいいのか、その答えのひとつがイタリアにあるような気がしました。

イタリアの快適な避難所については、次週でお伝えします。日本ではとりいれられない部分があるとしても、それはどこなのか、なぜなのかについての分析は今後の課題です。ですが、被災してもこんな生活が保障されるというのは災害が多い国では希望が持てますね。

希望があると、災害対策に全く興味がない方にも興味を持っていただけるのではと思い、写真をたくさん紹介しました。

災害が起こって初めて災害対策を考えるというのではなく、多くの人が、今のままの制度でいいのかな?もっと工夫できるのでは?事前にできることがあるのでは?と思うきっかけにしていただければいいなと思っています。

来週の避難所の写真も「すごい」がいっぱいです。お楽しみに!で、記事よりもっと詳しく知りたいという方や、来週まで待てない方も、ぜひ、宮定氏の講演を聞いてみていただくことをおすすめします♪

氏が国内外を問わず被災地を訪問され発信されるのは、阪神・淡路大震災の大火災で甚大な被害を受けた長田区の復興まちづくりに24年間にわたり関わってこられた経験が基になっているとのことです。

テーマは、『災害が起きても尊厳(生活空間)を守るには』。

現在では、東日本大震災・熊本地震の小さな農漁村の生活者と一緒に漁師等をしながら、地域の生活・文化にあった再建をするために、何か良い方法はないかと、模索され続けているそうです。詳しくは下記にて。

■宮定章フェイスブック
https://www.facebook.com/chang.ding.58

■認定NPO法人 まち・コミュニケーション
http://park15.wakwak.com/~m-comi/

■被災地のつぶやき
https://www.facebook.com/hisaichitsubuyaki117311/
※毎日一話を、認定NPO法人まち・コミュニケーションが、運営しています。『災害に負けないまちづくり!』を目指し、“1.未来の災害に備えるため”  “2.被災者同士が葛藤を共感するため” 、教訓を発信します。

それではまた来週!

(了)
 

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