「怒っても仲直り」でいい 佐世保中央病院 日和田正俊さん サポーター養成 認知症介護 悩みに寄り添う

 「介護はトムとジェリー。怒っても、ケンカしてもいい。仲直りして笑顔になれればいいんだよ」-。認知症サポーター養成講座で必ずそう語り掛ける日和田正俊さん(29)=佐世保市黒髪町=。佐世保中央病院認知症疾患医療センターで精神保健福祉士として働きながら、市内で開く講座の講師を務める。昨年度は829人を養成。市内で最多だったとして、事業を担う市福祉活動プラザから感謝状を受けた。「ふれあいを大切に、認知症という病気の奥深さを伝え続けたい」と話している。
 講座では▽病気と治療▽症状や接し方▽予防法-について伝える。日和田さんによると、介護の原則として「相手を否定せず、怒らないことが大切」とされるが、それが逆に介護する側のストレスになり、自分を責めてしまう人が多いという。
 日和田さんは「人間だから頭にきたりケンカすることもある。おいしいものを食べたりして笑顔になれる時間を持って、仲直りすればいい」と語り掛ける。その言葉に「楽になった」と涙を流す人もいるという。「不安を取り除くことが自分の喜び。向いているのかな」と目を細める。
 高校時代はいわゆる不良少年だった。自分の将来が見えないとくすぶっていた日和田さんの人生を変えたのは、幼なじみが薦めてくれた1冊の本。「夜回り先生」の名で知られる水谷修さんのものだった。
 自分のような“どうしようもない”子どもたちを否定せず「いいんだよ」と語り掛ける水谷さんの言葉に衝撃を受けた。ひと言の重みを痛感し、次第に「人の悩みに寄り添い、何かを伝えることで力になれる仕事に就きたい」と考えるように。看護師の母の薦めもあって今の仕事を志すようになった。
 「『認知症の人は24時間認知症で、一人では何もできない』という偏見をなくしたい」「出会ってきた患者のありのままの姿、家族の思いを伝えたい」。そんな思いで講師を務める。
 「もし自分が認知症になったら、何をしてもらいたいですか」-。日和田さんはいつも、講座の最後にそう問いかける。

◎ズーム/認知症サポーター

 認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で患者や家族の手助けをする。厚生労働省が2005年から養成を進めている。基本的知識を学んだ「キャラバン・メイト」が講師となり、ボランティアで地域や事業所、学校などで講座を開く。1時間~1時間半の講座を受けると、サポーターとして認定される。佐世保市では昨年度、2749人を養成した。3月末現在、全国で約1015万人、県内約11万3000人、市内は約1万6000人いる。

「介護はトムとジェリー。怒っても、ケンカしてもいい」と語る日和田さん=佐世保中央病院

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