1968年から長崎県など西日本を中心に被害が広がったカネミ油症の発覚から今年で半世紀。被害者が多い五島市と患者団体などでつくる「カネミ油症事件発生50年事業実行委員会」は19日、事件の教訓の次世代継承を目的に、初の市民向け連続講座を市内でスタートさせた。初回講師の下田守・下関市立大名誉教授(69)は、複雑な経過や被害実態など事件の全体像を解説。次世代被害などさまざまな問題が現在進行形であり、「過去の出来事とせず、関心を持つべき」と呼び掛けた。
カネミ油症は、カネミ倉庫(北九州市)が食用米ぬか油を製造する際、熱媒体のカネカ(大阪市)製ポリ塩化ビフェニール(PCB)やこれが変質したダイオキシン類が混じり、広く販売されて発生した戦後最大規模の食中毒事件。
下田氏は、本格的な事故調査の欠如、中途半端に終わった原因究明、診断基準の硬直的な運用など、多種多様な問題点を指摘。国やマスコミが皮膚症状ばかりを強調し、狭く偏った病像が流布されたことで適切な医療が制限されてきた面も強調した。またカネカについて「当時PCBの危険性をカネミ倉庫に十分注意喚起したとは言えない」と批判した。 受講した五島市職員の長尾久美子さん(33)は「50年たっても症状や治療法を含め解明されていない部分があり、驚いた。ダイオキシンの健康被害についても詳しく知りたい」と話した。
講座は同市福江総合福祉保健センターで開かれ、10月まで計6回を予定。初回は市民約40人が参加した。
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