洋上風力発電の建造船完成 船体沈ませ風車設置

 長崎県五島市沖で計画が進む浮体式洋上風力発電事業で、事業者の戸田建設(東京)などが出資する合同会社が、従来の工法よりも効率的に風車を設置する半潜水型台船を完成させた。台船自体が半分ほど海面下に沈むことで、甲板に載せた風車を海上に浮かせることができる。同事業専用に半潜水型台船が建造されたのは世界で初めて。
 同市沖には環境省の実証事業を終えた浮体式洋上風車1基があり、戸田建設の子会社が昨年から運用している。同社は2021年までにさらに風車9基を新設する計画で、現在は環境影響評価(アセスメント)の手続き中。
 台船は全長110メートル、幅43メートルで、載貨重量は約1万3500トン。従来の工法では大型クレーン船などを使って海上で風車をつり上げていたが、新たな台船は支柱などを岸壁から積んで現場海域に行き、船を沈ませて風車を立ち上がらせる。工程が短縮され、コストも低く抑えられるという。
 台船は五島沖で導入されている「浮体式」だけではなく、海底に固定した土台の上に風車を設置する「着床式」の施工も可能。同社は「年内か年明けには五島沖での施工に入りたい。全国の他の地域での洋上風力発電の普及にもつながれば」と期待する。

完成した半潜水型台船。中央(空間部分)の甲板に風車の支柱を載せ、船体を半分ほど海中に沈ませることで、風車を海面に浮かせる=五島市

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