【候補者男女均等法】清川村は女性ゼロ、神奈川県内もまだまだ

 神奈川県内地方議会での女性の進出は全国と比べて進んでいる。関係者は「住民運動が盛んな土地柄」を理由の一つに挙げ、女性の視点が生かされた施策も実行に移されていると評価するが、一方で女性議員が一人もいない地方議会もあり、平均すると男女同数にはほど遠いのが実情だ。「政治分野の男女共同参画推進法」の成立に、有権者らはさらに「新しい風」が吹き込むことを期待している。

 女性議員が53・8%を占め、葉山町議会は県内で最も割合が高い。1985年に同町初の女性町議となり、現在8期目の横山すみ子さん(76)は、高水準の背景について「町外から引っ越してきた人が多く立候補しやすい。以前から盛んな市民運動も下地になっている」と話す。

 初当選間もないころ、子育てや介護の問題について持ち掛けても、同僚は「家の中でやる話だ」となかなか取り合わなかったという。同性の仲間が増えるにつれ、「視察先にごみ分別の先進自治体を選んだり、女性の視点を取り入れてきた。今では男女関係なく、共通の課題として取り組んでいる」と変化を実感する。

 大磯町も先を行く議会の一つだ。2003年の町議選で女性が定数18の半分、07年は過半数の8議席(定数14)を獲得。11年も8議席(同)、15年も7議席(同)を占めている。

 現職女性議員の中で、最多となる当選5回の鈴木京子さん(64)は「もともと住民運動が活発だった地域。女性が物申すことへの壁が取り払われていたこともあり、次々と町政の場に意見を伝えたい女性の手が挙げられるようになっていった」と振り返る。

 女性議員の声を生かし、町内のイベント会場などに仮設テントを設営、授乳やおむつ替えができる「移動式赤ちゃんの駅」は14年に導入した。町議会事務局は「一般質問でも環境問題や子育て、教育関係の議題が丁寧に取り上げられ、町の施策に女性議員の意見が反映されるようになった」と指摘する。

 今回の法成立に、横山さんは「まだまだ男性ばかりの議会は多い。法律に目標が示されたことは女性が一歩踏み出すきっかけになるのでは」と期待する。鈴木さんは「法律をあえて作らなければならない悲しさや矛盾も感じるが、女性の進出や活躍を世間や家庭が応援してほしい」と社会の熟成を願った。

「時代に合わせて」声も

清川「女性ゼロ」

 清川村は宮ケ瀬村と煤ケ谷村が合併し現在の村政になった1956年以降、議会に女性議員が誕生したことはない。村によると、立候補は一度もないといい、議長の笹原和織さん(55)は「一般論としてだが、現状は望ましくない」と率直に語る。

 しかし、弊害については「小さな自治体なので男性議員の工夫や努力で女性の声を聞き、少なかったと考える」と話す。

 村の無職女性(78)は「いろいろな団体から声が届くようになっているので不便はない」と述べ、友人の女性(68)も「女性でも男性でも、しっかりと私たちの声を聞いてくれる人がいたらそれでいい」と言う。それでも「女性議員が出てきたらやっぱり応援はしたい」と2人は口をそろえる。

 一方、30代女性は「子育てや雇用の問題など女性の議員もいた方が相談しやすい。時代に合わせ、新しい風も取り込んでいって村がもっと良くなるようにしてほしい」と語った。

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