2017年決算「上場2,681社の平均年間給与」調査

 2017年決算の上場2,681社の平均年間給与(以下、平均給与)は、599万1,000円(中央値586万3,000円)で、前年の595万3,000円から3万8,000円(0.6%)増えた。
 平均給与は2011年に調査を開始以来、6年連続で前年を上回った。ただ、増加率は2年連続で前年を下回り、縮小している。これは2,681社のうち、1,622社(構成比60.4%)で従業員数が増えており、積極的な人材採用も平均給与の伸び率鈍化につながった一因とみられる。
 業種別のトップは、建設業の695万3,000円(中央値694万9,000円、前年比2.7%増)だった。また、原発事故や電力値上げ等で給与の一部をカットしていた電力各社が復活した電気・ガス業も673万4,000円(前年比2.8%増)と増加。一方、小売業は475万円(同0.8%増)で7年連続の最下位で、建設業とは1.4倍の開きがあった。金融・保険業は640万4,000円(同1.3%減)で、このうち上場銀行70行では、トップのスルガ銀行(810万6,000円)が唯一の800万円台だった。
 10業種のうち、前年を下回ったのは前年トップだった不動産業と、マイナス金利で収益環境が厳しい金融・保険業の2業種。
 平均給与のトップ企業は、M&A助言会社のGCAで1,559万円。前年2,139万6,000円から580万6,000円減少したが、4年連続で首位を守った。上位10社内に三菱商事など総合商社が5社と半数を占め、次いで、M&A助言・仲介2社、民間放送、不動産、工作機械が各1社と、総合商社の高額さが際立った。
 国税庁の「平成28年分民間給与実態統計調査結果」によると、2016年の民間企業の平均給与は421万6,000円(正規486万9,000円、非正規172万1,000円)で、2017年の上場企業の平均給与と比べ、正規社員で1.2倍(112万2,000円)、非正規では3.4倍(427万円)の格差があった。

  • ※本調査は2017年決算(1月-12月)の全証券取引所の上場企業を対象に有価証券報告書で平均年間給与を抽出した。対象は、2011年から2017年決算まで連続比較が可能な2,681社(持株会社、変則決算企業は除く)。
上場企業2,684社 平均年間給与

GCA(株)が1,559万円で、4年連続でトップ

 個別企業の平均給与は、トップがM&A助言会社のGCAで1,559万円。前年(2,139万6,000円)より580万6,000円減少したが、4年連続でトップを守った。
 2位は不動産業のヒューリックで1,530万6,000円。都心の駅近に多くのオフィスビルや賃貸マンションを保有し、高収益を反映して前年(6位、1,418万4,000円)から4ランクアップ。
 3位は朝日放送で1,515万8,000円。2015年以来、2年ぶりに平均給与が1,500万円台に回復し、前年(4位、1,498万円)から1ランクアップした。
 4位は中小企業のM&A仲介では最大手の日本M&Aセンターで1,418万8,000円。中小企業のM&Aニーズを背景に好業績を維持し、前年(10位、1,237万4,000円)から6ランクアップ。
 5位以下には総合商社が5社ランクインした。5位の三菱商事(1,386万2,000円)から6位の伊藤忠商事(1,383万8,000円)、8位の住友商事(1,255万1,000円)、9位の丸紅(1,221万3,000円)、10位の三井物産(1,213万5,000円)と、資源価格の回復と非資源分野の収益拡大で損益が改善。丸紅(前年11位)は2年ぶりにトップ10に入った。
 このほか、工作機械用NC装置製造のファナックが1,318万3,000円で7位となった。
 トップ10のうち、総合商社が5社ランクインし平均給与の高さが際立った。また、中小企業の事業承継問題や上場企業の投資拡大を受け、M&A関連も2社ランクインした。

平均年間給与の「増加」は1,614社、前年より47社減少

 上場2,681社のうち、平均給与が前年より増えたのは1,614社(構成比60.2%、前年1,661社)で6割を占めた。一方、減少は1,048社(同39.0%、同1,001社)、横ばいは19社(同0.7%、同19社)だった。
 平均給与の「増加」企業数は6割を占めたが、社数は前年より47社(2.8%減)減少した。一方、「減少」は47社(4.6%増)増えており、明暗を分けた格好となった。

上場企業2,681社 平均年間給与前年増減

平均年間給与の増減率 0.0%超~1.0%未満が最多の427社

 上場2,681社の平均給与の増加率をみると、最多レンジは0.0%超~1.0%未満で427社(構成比15.9%、前年360社)だった。増加率10.0%以上は前年と同数の96社で、同1.0%以上から10.0%未満の各区分では社数は減少した。
 減少率の最多レンジは、0.0%超~1.0%未満で328社(構成比12.2%、前年316社)。減少率は、4.0%以上~5.0%未満を除くすべての区分で社数が前年を上回った。
 増加率10.0%以上は96社(構成比3.5%)に対し、減少率10.0%以上は52社(同1.9%)にとどまり、全体の平均給与を押し上げた。ただ、増加が1,614社(前年1,661社)、減少は1,048社(同1,001社)と、2年連続で平均給与の減少企業は増えており給与上昇に陰りもうかがえる。

業種別 電気・ガス業が前年比2.8%増、建設業も同2.7%増

 業種別の平均給与では、 最高が建設業の695万3,000円(中央値694万9,000円)で、2年ぶりにトップに返り咲いた。一方、最下位は7年連続の小売業で475万円(同463万8,000円)だったが、4年連続で前年を上回った。小売業は建設業と並ぶ“雇用の受け皿”の側面を持ち、新卒や非正規社員数が多く全体給与が押し下げられやすいが、深刻な人手不足で待遇改善に動いていることがわかる。
 増加率トップは、電気・ガス業(前年比2.8%増)。次いで、建設業(同2.7%増)で、2業種は2.0%以上の伸び率だった。電気・ガス業は20社のうち、12社で前年を上回った。東日本大震災で経営環境が悪化したが、ここにきて給与・賞与の改善が進んだ。建設業は146社のうち、109社(構成比74.6%)が前年を上回った。好調な業績が業界全体に波及していることを裏付けた。
 減少は、金融・保険業と不動産業の2業種で、いずれも2011年以降で初めての減少となった。

上場企業2,681社 平均年間給与 業種別

平均給与1,000万円以上は29社、500万円以上700万円未満が5割

 平均給与の社数の最多レンジは、500万円以上600万円未満で820社(構成比30.5%)。次いで、600万円以上700万円未満が685社(同25.5%)だった。500万円以上700万円未満を合算すると1,505社(同56.1%)で半数を超えた。500万円未満は631社(同23.5%)と、前年(649社、構成比24.2%)よりも18社減少し、調査を開始した2011年以降、社数の減少が続いている。
 平均給与1,000万円以上は29社(構成比1.0%)で前年より1社減少。平均給与2,000万円超は、前年はGCAの1社あったが、2017年は2014年以来、3年ぶりにゼロだった。  増加率トップは、通販事業のパス(800万2,000円)で前年比76.6%増。経営再建中で、事業再編などにより給与が低い社員が辞め、平均給与が前年より1.7倍増と大幅にアップした。
 2位のゴールドウイン(638万円)は前年比47.2%増。前年まで算出方法に販売員を含めていたが、2017年は販売員を除いたため前年より1.4倍に拡大した。
 3位の日本伸銅(575万8,000円)は前年比43.9%増。人材確保のために賞与が増えたことで平均給与が大幅に増加した。

上場企業2,681社 平均年間給与 金額別

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