厚木5次爆音訴訟、国は争う姿勢 第1回口頭弁論始まる

 日米が共同使用する厚木基地(大和、綾瀬市)の航空機騒音の解消を目指し、基地周辺住民が国に航空機の飛行差し止めと総額約131億円の損害賠償を求めた「厚木基地第5次爆音訴訟」の第1回口頭弁論が21日、横浜地裁(大久保正道裁判長)で開かれた。国側は請求の棄却や却下を求めて、争う姿勢を示した。 

 国側は答弁書で、米軍機の運航を「国の支配の及ばない第三者の行為」とし、差し止め請求は失当と主張。自衛隊機の運航についても「防衛相の権限行使に裁量権の逸脱はない」と述べ、違法性を否定した。

 また米空母艦載機の岩国基地(山口県)への移駐が今年3月に完了したことにも触れ、「騒音状況は相当程度、変化・低減している可能性がある」とした。

 原告側は法廷で意見陳述を実施。大波修二原告団長は「過去4度の裁判はすべて騒音を違法と判断し賠償を認めたが、騒音は依然として生活を脅かし続けている」と訴えた。福田護弁護団長は「市街地のただ中に基地があることは世界の非常識。改めるには司法の毅然(きぜん)とした対応が不可欠」と迫った。

 原告は大和、綾瀬、相模原、座間、海老名、藤沢、茅ケ崎、東京都町田の8市民。昨夏から今春までに1~3陣に分かれて順次提訴し、参加人数は過去最多の8879人に上る。

 民事訴訟に加え、公権力行使の適否を問う行政訴訟も同時提訴し、基地を発着する自衛隊機と米軍機の夜間飛行差し止めを請求。さらに騒音被害に対する損害賠償として、1人当たり月額4万円の支払いを民事訴訟で求めた。

 2016年12月に終結した第4次訴訟では、二審までの行政訴訟で自衛隊機の一部飛行差し止めが初めて認められたが、最高裁で判断が覆り退けられた。米軍機については飛行差し止めを認めた事例はなく、国に損害賠償のみを命じる司法判断が繰り返されている。

 空母艦載機移駐後の厚木基地について、米海軍司令部は「引き続き日米同盟にとって重要な施設」との見解を表明。訓練や給油、機体整備のため使用を継続するとしており、住民側には騒音軽減効果に懐疑的な見方が広がっている。

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