忘れない 希望奪った日 五大路子さん、29日に横浜大空襲「読み芝居」

 横浜の中心部が焼夷(しょうい)弾に焼かれた横浜大空襲から73年となる29日、ハマっ子の俳優、五大路子さんが当時を題材にした「読み芝居」を上演する。焦点を当てるのは空襲の激しさというより、少女のささやかな希望が絶たれた非情な現実だ。

 「セーラー服のスカートをはいて満開の桜の下を歩きたい」。もんぺ姿で勤労動員に通う登場人物の願いは、かなわなかった-。

 上演される「スカートをひるがえして」(あべゆかり作、松井工脚色・演出)の脚本は、五大さんの率いる演劇集団「横浜夢座」が続けているセミナーの受講生が手掛けた。フィクションながら、空襲を経験したお年寄りへの聞き取りが基になっている。

 「戦争によって、おしゃれをしたいという女の子の思いが奪われた。そのことも古里・横浜のかけがえのない歴史だと思う」。五大さんはそう話す。セミナーを通じて市民も加わり、人々の息づかいを作品に反映させようと力を注ぐ。「日常が失われる戦争の意味を考えられるように」

 公演は無料。横浜市中区日本大通の県住宅供給公社1階「Kosha33スタジオ」で午後6時から。先着80人で同5時から整理券を配布する。問い合わせは横浜夢座事務局(株式会社オフサイド内)電話045(661)0623。

横浜ゆかりの詩人、故筧槇二さんが大空襲を描いた短編小説「真昼の夕焼け」など読み芝居で戦争を伝え続ける五大路子さん(五大さん提供)

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