米イージス艦「ミリウス」横須賀入港 ミサイル防衛能力

 米海軍のイージス駆逐艦ミリウスが22日、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に入港した。オバマ前政権のアジア重視政策に基づく追加配備で、予定していたイージス艦3隻の増強が完了。横須賀を事実上の母港とする艦船は13隻となった。

 ミリウスは全長約154メートルで、乗員は約300人。横須賀への配備前に改修され、最新鋭の防空、弾道ミサイル防衛などを備えた戦闘システムを搭載している。母港だった米サンディエゴを出港し、22日午後4時45分ごろ、同基地に着岸した。

 艦長のジェニファー・ポンティアス中佐は報道陣に対し、「日米同盟は平和と安全の礎。海上自衛隊や地元との絆を育み、より強固なものにしていく」とあいさつ。「ミリウスが加わったことで、特に弾道ミサイル防衛で優れた能力を提供でき、日本防衛とインド太平洋地域の安全と安定に対する米国の責務をサポートすることになる」と配備の意義を強調した。

 日本周辺については「非常に複雑な作戦地域」とし、「全ての任務において準備をしなければならない」と力を込めた。

 ミリウスの追加配備で、横須賀を事実上の母港とする艦船は過去最多の14隻となる予定だったが、昨年6月に衝突事故を起こしたイージス駆逐艦フィッツジェラルドが修理のために同基地を離れたという。

賛否両論、地元反発も

安全保障にプラス ◆ 緊張緩和に逆行

 当初の予定より1年弱遅れ、横須賀基地に配備されたミリウス。最新鋭の防空、弾道ミサイル防衛などを備えた艦船の到着に、専門家は「日本の安全保障にとって大きなプラス」と評価する。一方、地元の市民団体は米軍の戦力増強を「朝鮮半島の緊張緩和に逆行する」などと批判している。

 「米軍が海外に前方展開する基地では最大規模。日本の安全保障にとって大きなプラスになる」。安全保障問題に詳しい日本国際問題研究所主任研究員の小谷哲男氏は配備を歓迎する。

 ミリウスをはじめ、横須賀に近年配備されたイージス艦は、北朝鮮が発射を繰り返す弾道ミサイルだけでなく、中国の巡航ミサイルにも、1隻で対応できる能力を有する。

 小谷氏は、中国や北朝鮮の近年の動向をにらみ、「米国が最も“ホットスポット”に近い横須賀の戦力を増強している」と説く。

 中国の巡航ミサイル技術について「この20年間で、米国の現実的脅威になりつつある」と指摘。10年半ぶりに南北首脳会談が開かれ、「核なき朝鮮半島」を目指す共同宣言が採択されたが、「本当の意味で北朝鮮の非核化が進むまで、米国は脅威対処を続ける」とみる。その上で「今後、海上自衛隊も同様の艦船を持つ予定で、さらなる日米同盟の抑止力の強化につながる」と期待する。

 一方、横須賀の市民団体「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」は22日、米海軍や国に対して配備の撤回を求めるよう、横須賀市に要請した。

 会見した呉東正彦弁護士はフィッツジェラルドやイージス駆逐艦ジョン・S・マケインが相次いで衝突事故を起こしたことを挙げ、「まずは横須賀基地の修理能力に応じた隻数にし、修理作業を徹底しなければならない」と米軍の判断を批判。加えて「(追加配備は)昨今の朝鮮半島情勢の緊張緩和に逆行している」、「母港艦船の増加に伴い、(乗組員による)犯罪の増加も予想され、地域社会への負担が増すことが懸念される」とも述べ、配備撤回を訴えた。

米海軍横須賀基地に入港するイージス駆逐艦「ミリウス」=22日午後4時10分ごろ

© 株式会社神奈川新聞社