FIA-F4鈴鹿:角田裕毅がダブルウインで5連勝。第6戦ではバリアにマシンが乗り上げる大クラッシュも

 FIA-F4選手権シリーズの第3大会が5月19~20日に鈴鹿サーキットで行われ、第5戦、第6戦ともに角田裕毅(HFDP/SRS/コチラレーシング)が優勝して5連勝。なお第6戦ではクラッシュした1台がタイヤバリアに乗り上げるほどの大クラッシュが起きている。

 ここまで3連勝で、ランキングのトップを疾走する角田が、鈴鹿でも絶好調。木曜日、金曜日に行われたF4トレーニングでは4セッション中3セッションでトップにつけて、もちろん総合ベストを記していた。

 鈴鹿といえば、SRS-Formula出身の角田にとってホームコースであって、ホンダ勢にとってお膝元。名取鉄平(HFDP/SRS/コチラレーシング)や大滝拓也、佐藤蓮(SRS/コチラレーシング)といったチームメイトも続くなか、唯一互角に渡り合っていた小高一斗(FTRSスカラシップF4)が、予選、決勝をどう戦うか注目された。

 前日未明に降った雨の影響がわずかに残っていたとはいえ、ほぼドライコンディションで予選は競われることとなった。

 後半に路面状態が向上するのは確実ながら、いつ赤旗が出されてもおかしくないのがFIA-F4の予選だけに、ほとんどのドライバーが早々にアタックをかけたのに対し、走り出してはいたが、しばし成りを潜めていたのが角田。逆に最初に2分7秒台に乗せて、パドックをアッと言わせたのが岩佐歩夢(Canastera・EMC・Rn-s)だった。昨年の最終大会以来の出場となる、鈴鹿カート選手権出身の17歳が大躍進を遂げていた。

 しかし、岩佐がトップに立ったのも束の間、ようやくタイムを出してきた角田が大幅なレコード更新となる、2分6秒台をただひとり連発して、2戦ともにポールポジションを獲得する。

 小高も2戦とも2番手につけたが、6秒台に入れたのは1回のみ。いかに角田が安定して速かったかが分かろうというもの。

「最初のプランどおり、路面ができあがるのを待って遅めにアタックしました。でも、ストレートで追い風だったので最高速も伸びたから、攻めていって1コーナーでスピンしたり、トラフィックにも捕まったので、まだまだ行けた感触はあったんですけども」と角田。

 逆に「タイムを出しに行くのが早過ぎました。6秒台に入った時、まだまだ行けたなと思った反面、その時にはもうフロントのタイヤが終わっていて。まぁ、2番手なら大丈夫かと。富士より抜きにくいコースですが、仕掛けていきたいと思います」と小高は反省しきり。

角田裕毅(HFDP/SRS/コチラレーシング)

 なお、第5戦の3番手は名取、4番手はHFDPのOB、石坂瑞基(TOEI BJ Racing F110)で、注目の岩佐は佐藤を従え、5番手からのスタートに。本来ならば大滝が3番手タイムを記録していたが、ペナルティポイントの累積で10グリッド降格となっており、追い上げを果たせるかどうかも注目されていた。

 第5戦決勝は角田が無難なスタートを切ったのに対し、小高は出遅れて、脇をすり抜け1コーナーに2番手で飛び込んでいったのが名取だった。そして、その後方では石坂がストールして、一瞬緊張感が走るも、後続車両は巧みにかわしていって一安心。石坂は11番手にまで順位を落としてしまう。

 オープニングラップの上位陣は一列縦隊、角田、名取、小高、岩佐、佐藤、そして川合孝汰(DENSOルボーセF4)……と続くも、2周目に入ると早くも角田が独走態勢に。そして3周目からは名取と角田の2番手争いが、4周目からは岩佐と佐藤、川合による4番手争いが激しさを増していく。

 そのなかで、動きがあったのが4番手争いだ。6周目のシケインで佐藤に抜かれた岩佐は、7周目の1コーナーでオーバーラン。これで川合が5番手に浮上する。さらに最終ラップの130Rで小高が名取に迫るも、ここでは逆転ならず。が、シケインでの名取のミスを逃さずとらえた、小高が逆転を果たすこととなった。もちろん、その間にも角田はまったく危なげのない走りを見せて、今季4勝目をマークすることとなった。

「勝てて良かったんですが、小高選手のペースが良かったので、スタートミスしていなかったら、展開も違っていたかもしれませんね。もう少し目に見えてわかるような離し方にしたかったんですが、明日のレースのことも考えてタイヤを守るような走りをしていたので。まだ何があるかわからないので、明日はさらに気を引き締めて頑張りたいと思います」と角田。

 佐藤が4位で、5位は川合。石坂は岩佐に続く7位でゴール。大滝は追い上げ実らず、16位に甘んじた。

第5・6戦を制した角田裕毅(HFDP/SRS/コチラレーシング)
第6戦はレース途中から入ったセーフティカーランで終了に。

 第6戦決勝は、吹く風も穏やかになり、まさに五月晴れの好天の中での戦いとなった。ここでは小高がスタートを決めて、角田の前に出ることに成功。今度こそ3番手スタートとなった大滝が名取を従えることとなり、5番手スタートだった岩佐は佐藤に抜かれたばかり、石坂と川合をすぐ後ろに置くこととなった。

 まもなくトップ争いは4台に絞られ、それぞれ一歩も引かぬ構え。と同時に、早めの仕掛けを見せていた。3周目のシケインで、まず小高に角田が迫り、ガードを固められている間に大滝が出し抜こうとするも、それはかなわず。だが、戦いはなおも続いて、1コーナーから大外刈りをかけてきた角田を、小高はS字で前に出す。

「もうちょっと粘れたんですが、接触して順位を落としたらもったいないので、仕切り直してもう1回行こうと思っていました」という小高の判断は誤りではなかったが、まもなくSCボードが出されて正解にはならず。

 というのは、トップグループが通過した直後に、1コーナーで3台が絡むクラッシュがあったから。そのうち1台はタイヤバリアに乗り上げているほどで、誰にも怪我がなかったのが、むしろ不思議なぐらい。「次の周に1コーナーを見たら、ぐしゃぐしゃになっていたんで、これは絶対に(SCが)解除にならない。終わったな……と」と小高は肩を落とす。

 小高の予測どおりSCランはしばらく続いて、30分を経過したところでタイムアップ。レースは終了となり、角田の5連勝が決定した。

「スタートの蹴り出しは良かったけど、ホイールスピンしちゃったんです。ペースが良かったので、まともにレースできなかったのは残念です。前に出さえすれば引き離せる自信がありました。この周しかないな、というのをうまくまとめて抜くことができたので、自信にはつながりましたが、本当はラッキーって言われないようなレースがしたかったので、そこだけが心残りです」とは、勝ってなお贅沢な悩みではある。

 3位は大滝が、4位は佐藤が獲得。なお、インディペンデントカップは、第5戦で仲尾恵史(TCS Racing Team)がトップチェッカーを受けたが、黄旗追い越しのペナルティでクラス4位に降格。繰り上がってスポット参戦の久保宣夫(ロジスティックサービスHiguchi)が優勝を飾るも、第6戦は燃料計トラブルで早々にリタイアして連勝ならず。仲尾が今度こそ優勝を飾ることとなった。

第6戦で菅波冬悟、岩佐歩夢、岡本大地による多重クラッシュが発生

© 株式会社三栄