現在J1で首位を独走するサンフレッチェ広島と、それを追いかける2位FC東京。この2クラブは、2トップが猛威を振るっているという共通点がある。
広島はスピードとパワーを併せ持つパトリックが絶対的な柱となっており、相棒には渡大生かタイ代表のティーラシン・デーンダーを置くケースがほとんどだ。前半戦の広島は[4-4-2]の守備ブロックを軸とした堅守を1つの武器とし、ボールを奪うとパトリックら2トップを活かしたシンプルなカウンターに持ち込むパターンが見事に機能している。パトリックはここまで得点ランク1位となる10得点を挙げており、パトリックのパワーと推進力は相変わらず他クラブのDFにとっての脅威となっている。
FC東京ではパワーと決定力を武器とするディエゴ・オリヴェイラ、日本サッカー界屈指のスピードスターである永井謙佑の2トップが鉄板だ。この組み合わせは実にシンプルで、ボールを前線でキープできるオリヴェイラとスピードなら誰にも負けない永井の2人だけで攻撃を完結させるだけの力がある。広島と同じく2トップを軸としたカウンターが効いており、オリヴェイラは9得点を挙げて得点ランク2位だ。
両チームは昨年揃って苦戦しており、FC東京は13位、広島は15位でフィニッシュしている。そのチームが現在上位にいるのは2トップの力が大きく、今更ながら今年はJリーグで2トップのブームが起きていると言ってもいいだろう。
6位と徐々に順位を上げてきたヴィッセル神戸でも渡邉千真とウェリントンの2トップが好調だ。第14節ジュビロ磐田戦ではそれぞれ1得点ずつ挙げて2‐0の勝利を収め、続く15節ではコンサドーレ札幌相手に2人が2得点ずつ挙げて4‐0で粉砕している。いずれも外国人FWがキーマンになっているものの、Jリーグで注目を集める2トップは是非とも日本代表に取り入れてもらいたいオプションと言える。
前日本代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチは大迫勇也の1トップにこだわってきたが、今回西野朗新監督がガーナ代表戦へ向けて召集した27名のメンバーには2トップに適性のあるFWも多く選ばれている。例えばFC東京や広島のようにパワーのあるFWを軸に考えるなら、日本代表の場合は大迫がポイントになる。その相棒に機動力のある選手を配した2トップは有効なオプションとなるはずだ。
レスター・シティで2トップに慣れている岡崎慎司、シュトゥットガルトで出場機会はほとんどなかったが、浅野拓磨はFC東京の永井と同じく日本サッカー界を代表するスピードスターだ。西野朗監督が浅野のスピードを買っているのは間違いなく、これまでのように右サイドを上下動させるよりはボールをキープできるFWと前線でコンビを組ませた方が能力を発揮しやすいはずだ。マインツでチームトップとなる8得点を決めた武藤嘉紀も2トップに対応可能で、マインツでも194㎝の長身FWエミール・ベアグリーンと機動力のある武藤のコンビが残留へのカギになると特集されていたこともある。
日本はグループステージでコロンビア代表、セネガル代表、ポーランド代表と対戦するが、いずれも厄介な相手だ。日本が楽にボールを支配できるはずはなく、西野ジャパンの準備期間が短すぎることを考えても守る時間が長い苦しい展開となるのは目に見えている。その際にJリーグで猛威を振るう2トップを軸としたカウンターを1つのヒントにしてほしいところ。ハリルジャパンでは頑なに1トップを貫いてきたが、日本人選手の特性を活かすには2トップの方が良いかもしれない。
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